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2015年11月、米国食品医薬品局(FDA)が、遺伝子組み換え鮭を食品として許可。

2年後の2017年8月、カナダで世界初の遺伝子組み換え鮭「アクア・アドバンテージ」の販売開始。



遺伝子
── 俗に「フランケン・フィッシュ」とも呼ばれている鮭です。


成長を通常の鮭の約2倍に早めるため、ウナギに似た深海に住む「ゲンゲ」という魚の遺伝子を組み込んでいる鮭 ── なのかウナギなのか、もはやそもそもどちらでもない生物なのか……

(※ 生物学的には「鮭」だそうです)


遺伝子組み換え技術は、現在とんでもない領域にまで踏み込み始めているのですね。


    ── でも「遺伝子組み換え○○」ってほとんど見たことないかも……(「遺伝子組み換えではない」って書かれた食品はよく見るけど)。

    日本には遺伝子組み換え食品って、あんまりないんじゃないの?

    えっと……品種改良とかと何が違うの?

    っていうか、メリットだけじゃなくデメリットもあるのに売ってるの?

    食べて大丈夫なの?!

おぉ!
話しの流れをうまいこと質問で作っていただき助かります!



耳にすることも多く、買い物の際などには、さりげなく表示のチェックもしているけれど、具体的にはよくわからない「遺伝子組み換え」。

そのメリット・デメリットについてサクッとわかりやすく解説いたします。
皆さまの「ふふん、なるほど」に、少しでも役立てましたら幸いです。



「遺伝子組み換え」って何?

日本で主に流通している「遺伝子組み換え作物」は、


「大豆・トウモロコシ・菜種・綿実(ワタ / 食用油や粕を家畜の飼料などに利用)」


の4種。

ほとんど流通はしていないものの、流通・輸入が許可されているのが、


「ジャガイモ・てんさい(砂糖大根)・アルファルファ・パパイヤ」


合わせて全8種です。


冒頭の「アクア・アドバンテージ」は、動物に適用された世界初の遺伝子組み換え技術ですが、植物であってもその基本的な部分は変わりません。


例えば大豆なら大豆のDNAに、別の生物の遺伝子を組み込むことを指しています。

なぜそのようなことをするのか、といえば、大豆を今よりももっといい大豆にしたいから。


いい大豆……


……成長をより早くしたり、おいしくしたり、栄養価を高めたり、除草剤に対する耐性が強くなったりするのです。

(※「アクア・アドバンテージ」は、成長が2倍速になる「いい」鮭に)


さて、まずはDNAと遺伝子の関係ですが、


  • DNA: 遺伝情報を記録している物質(日本語に訳すと「デオキシリボ核酸」)
  • 遺伝子: その中の一部

生物を作るための必要情報がすべて書き込まれているのが「DNA」

その情報の中の一部「タンパク質の作り方」の記録を担当しているのが「遺伝子」です。


「ん? なんでタンパク質?」と思われるかもしれませんが、生物の体というのはほとんどがタンパク質でできているのですね。

(※ 一番多いのは水分ですが、これはまた別。体を満たしているのが水分。作っているのがタンパク質、のような感じです)。


ですが、いくら何でも「タンパク質」だけ、というのはマズい。

タンパク質以外の遺伝情報も欲しいです。


そこで必要となってくるのがDNA上にある「遺伝子以外」の部分。


上記の通り、DNAにおける「遺伝子」の占める割合は「一部」、具体的には全情報の1.5%程度しかありません。

残りの部分が、DNAがちゃんと働けるための操作・調節に必要な情報を担当してくれているのです。


そしてその、遺伝子・遺伝子以外すべて含めた「全遺伝情報セット」を「ゲノム」と呼びます。


  • DNA: 生物を作る上で必要な遺伝情報を記録している、目で見ることのできる(肉眼ではムリ)物質
  • ゲノム: その内容(情報)
  • 遺伝子: その中でも「タンパク質担当」

このような関係になっています。


人はヒトゲノム、稲ならイネゲノム、ネズミならマウスゲノム、菌類や細菌でさえ生物はそれぞれに違うゲノムを持っています。
しかも「ゲノム」はまだまだ研究しつくされていない、つまり今後どのような新発見があるかもわからない部分なのですね。


ついつい勢いでゲノムの話までしてしまいましたが、ここも結構大事。


が、一旦話を戻します。


「遺伝子組み換え」では、ある生物の持つ全遺伝情報の中から、役に立ちそうな性質を持つ遺伝子を、別の「いい○○」にしたい生物のDNAに組み込んでいきます。


そうすることにより「いい○○」に、つまり、機能性・生産性を高めることができる、とされています。


代表的なのが、

  • 除草剤耐性
  • 害虫抵抗性
を持たせるための遺伝子組み換え技術。


これらを含め、まずは遺伝子組み換えのメリットから見ていきましょう。




「遺伝子組み換え」でできること《メリット》

    除草剤耐性

    → 特定の除草剤に対しての耐性品種(かけても枯れない)に組み換え
    → その除草剤を撒くことで、雑草だけが枯れることに
    → 除草の手間が省ける


    害虫抵抗性

    → 食べると害虫が死んでしまうような毒素を持った品種に組み換え(哺乳類等には害なし)
    → 殺虫剤が減る

生産性の向上ですね。

手間や使用する農薬を減らしつつ、収穫量を増やすことができるのが最大のメリット。


どちらも使われるのは主に微生物の遺伝子です。

他、


  • 病気になりにくい品種
  • 冷害や塩害、乾燥した地域など、様々な環境でも育つ品種

また、食品としての機能性を高めたものも開発されています。


  • 腐りにくくなる
  • おいしくなる
  • 栄養価が高くなる
  • アレルギーの原因となる物質を減らすことができる
  • 花粉症の緩和に効果のあるお米

などなど。

なかなかやってくれます。


生産者にも消費者にも、販売者にもプラスだらけ。

しかも、これらが安定して供給されるとなれば、野菜の高騰により「昨日もおとといも今日もモヤシ」などという不幸もなくなりそうです。


「様々な環境下でも元気に育つ」というのもポイント。


今までその作物づくりに適していない、とされていたところでも栽培が可能になるのです。

野菜の高騰どころの話ではなく、安定した食糧供給というのは世界規模で大きな課題となっています。

遺伝子組み換え作物で、栽培地の限定等の問題がクリアできれば、こうした食糧問題解決への道が拓けるかもしれない、などとも期待が持たれているのです。


    ── あれ? じゃあ「遺伝子組み換えでない」って書かない方が売れるんじゃない?

    もしかして、そう書くのって売ってる人たちの「良心」ってやつ?
    「ごめんなさいね、使ってないんですよ」ってわざわざ書いてくれてるとか?

    ……っていうかさ、そんな優秀なのに、どうして「遺伝子組み換え」の食品ってほとんど見かけないの?

それは、アレです……つまり「デメリット」が半端ではないから、です。



ちなみに「遺伝子組み換えでない」という文言に関しての表示義務はありません。

表示してもいいけれど、表示しなくてもいい。

ですが、多くの食品ではあえて、


「これは遺伝子組み換えではないですよ!」


と書かれているのです。


なぜなら、販売側も、


「これは半端ではないデメリットを持った食品ではないですから! だから安心して買ってください!!」


と声を大にして伝えたいからなのですね。


また、上記の8種類以外の作物に「遺伝子組み換えでない」とわざわざ表示をするのもダメ。


「遺伝子組み換えでない」ことは間違いないのですが、それはそもそも「遺伝子組み換え」のものが日本では流通が許可されていない(8種以外)からです。 

これでは「遺伝子組み換え」のものが存在するかのような誤解を与えることになってしまいます。

だからダメ。



    ── もう……
    さっきのメリット台無しじゃないの……

……何だかすみません……



では続いて「デメリット」です。

「遺伝子組み換えでない!!(そしてメリットを台無しにしたのは私でもない!)」と表示したくなるほどの問題点とされる部分を見ていきます。




「遺伝子組み換え」の問題点《デメリット》

もう、これを初めに書いてしまうと先を読み進める気が失せるほどのパンチ力を持ったデメリットなのですが、


「健康被害」


が、まずは挙げられます。

ただし、はっきりとした因果関係への証明がなされているわけではない。

でも、限りなくクロに近い。


先ほどの「DNA」「遺伝子」「ゲノム」の関係です。

あらゆる生物は、それぞれのゲノムを持っています。

そこに全然関係のない生物の遺伝子を送り込むわけです。

当然すんなりとは働いてくれないのですね。


そこで起動装置のような役割を持つ「プロモーター」と呼ばれる物質も同時に投入。

(※ 組み換え技術で一番多くとられている「アグロバクテリウム法」の場合。
他にも電気刺激を与え開けた穴から目的の遺伝子を入れる「エレクトロポレーション法」。
高圧ガスで植物細胞に遺伝子を打ち込む「パーティクルガン法」などがあります)


こうして狙い通り「役に立ちそうな性質を持つ遺伝子」は働きを始め、目的のたんぱく質も作られていくことになります。

が、送り込んだ遺伝子だけでなく、元のDNA上にあった「遺伝子以外の残りの部分」まで働き始めてしまうのですね。


頑張って働き始めた部分に対し、この言い方は悪いと思うのですが、これは「余計」なこと。

この働きにより偶発的に有害な物質が生まれてしまう可能性が否定できないのです。


「組み換えた遺伝子による変化が有用性を生み出す」


この考えに間違いはないのですが、他の遺伝情報への影響等、安全性に確証が持てない段階でスタートしてしまったのが大問題なのです。


  • ガンや白血病の発生
  • 肝臓や膵臓など、臓器障害
  • アレルギー
  • 不妊
  • 自閉症

前述の通り、因果関係について立証はできないものの、実際には「遺伝子組み換え食品率」の高い国(米国)、または出回り始めた時期など、合致点がありすぎなのです。

関係性の否定がしにくい。


安全性の試験も行われているのですが、ここもちょっとダメ。

期間が短く(90日間)、データとしては十分なものとはいえません。

詳細についての一般公開もなし。


しかもそれを行っているのは、


「遺伝子組み換えを行っている企業」



    ── もう……
    基本的に「とりあえず何でも信じることから始める性善説」のスタンスを取ってる私でも、なんだかねぇ……

    中立な立場の機関が、そういう実験・データ公開っていうの、筋なんじゃないかしら……

    しかも90日って……体に入ってくるものなのですもの、もっと長期的なデータが欲しいじゃないの……
(※ ……ちょくちょく出てくる謎の女性…… 誰だか知りませんが、ここは同意見です)



これにはちゃんとした負の理由があり、先ほど書きました「除草剤耐性」を持つ等の品種ですね。

一部の大きな企業の、独占市場となっているからなのです。


── 特定の除草剤に対しての耐性品種(かけても枯れない)に組み換え


「特定の」です。

他の除草剤では枯れてしまう。


ですので、つまりは「セット販売」なのですね。


これはうまい。

良いとは1ミクロンも思っていませんが、商法としてはこうなります。


さらに凄いのは、この「種」への特許権。


通常、農作物は、


  • 種を植える
    → 育てる
    → できた作物を収穫
    → 種も収穫
    → 時期が来たらその種を植え、再び栽培開始

のような手順で作られていきます。

が、一部の大きな企業で独占的に開発・販売が行われている遺伝子組み換え作物では、これができない。


収穫後、また育てるためには「種」を再度購入する必要があるのですね。

農家の皆さまは、育てた作物の子ども、孫的な存在に出会うことはできないのです。

毎回、新しい種。


ここまでくると「種(しゅ)」の定義がおかしなことになってきます。


遺伝子組み換え作物は、完全に人間が食用とするためだけに作られたもの。

その作物自体が存在し続けるために子孫を残していく、という生物の基本的な部分が無視されているのですね。


そして、そのことも含め懸念されているのが「生物多様性」への影響です。


「生物多様性」というのは、簡単に言えば、


  • 「地球上の生物は、どのようなものであれ、自分ひとり、もしくは種(しゅ)、一種だけでは生きていけない」
  • 「一つひとつの生命は、他のたくさんの生命(生物)たちと繋がることで初めて生きていくことができる」
  • 「その微妙なバランスにより、地球という一つの環境ができあがっている」
  • 「そしてそのバランスが、地球上のすべての生物に恩恵を与えてくれている」

ここで始めに戻り、


  • 「その生物たちは、どのようなものであれ、自分ひとり、もしくは ── (と無限ループ)」

つまり、人間のためだけに存在している生命はないのです。


でも、遺伝子組み換え作物は ── と考えますと、いかに不自然な存在であるかがお分かりいただけると思います。



ここは、若干精神論的な観点からの見方ともいえるので措いておきます。

が、「生物多様性」への影響の危険性が指摘されているもう一つの理由は「生態系を壊す」可能性があるということ。


遺伝子組み換え作物は、前述の通り、これまで栽培できなかったような条件の悪い地域でも丈夫に育つように開発された品種です。

農薬や害虫、病気にも強い。


    この花粉がいつの間にか飛んでいき、遺伝子組み換えが行われていない従来の作物との交配が行われてしてしまったら……?

「従来の品種」VS「遺伝子組み換え作物との交雑種」
(※「交雑」: 異種間での交配のこと)


生き残るのは強い方です。

元々あった品種(遺伝子組み換えでない)は絶滅してしまうかもしれない。

これが「遺伝子汚染」です。



── 本来日本にはいない動物をペットにするため迎え入れ、その後、飼いきれなくなって池などに放してしまう。

で、大量発生。

元々池に生息していた魚などの生物が食い尽くされてしまう。



このような話をたまに耳にするかと思いますが、遺伝子組み換え作物でも同じようなことが起こる可能性は非常に高い、とされています。


上記の「生物多様性」ですね。


「人間のためだけに作られた存在の作物って、どうなのよ」という問題だけでなく、地球という環境を作り上げていくための微妙なバランスをも壊すことに繋がってくる。



そしてこれにはもう少し続きがあります。

遺伝子組み換え作物の「メリット」で挙げられていた、


  • 特定の除草剤に強い
  • 害虫への殺虫性を持つ

始めのうちはいいのですが、徐々に「雑草」「害虫」もこれらに対し、抵抗力をつけてくる。

やられっぱなしではないのですね。


つまり、


  • 特定の除草剤でも枯れない「雑草」
  • 害虫抵抗性のある遺伝子組み換え作物の毒性をもってしても死なない「害虫」

が出てくることになります(実際にその例もあり)。

通称「スーパー雑草・害虫」と呼ばれるものの出現です。


では、どうすればいいのか?


── さらに強力な除草剤や殺虫剤を撒く


もう完璧に本末転倒。

農薬や殺虫剤を減らそうとして耐性・抵抗性のある遺伝子を組み込んだはずが、さらに農薬等を増やす原因となってしまっているのです。


増やされた除草剤・殺虫剤は土の中に残留します。

土地や地下水が汚染されることに。


遺伝子組み換え作物を栽培している場所の近くで生活している方たちは、ダイレクトにその影響を受けてしまう。

健康被害の出ていることも確認されています。


そして、被害はその地域だけでなく、いずれ地球規模に広がっていくことは想像に難くありません。

「環境汚染」にも繋がってくるのです。



    ……遺伝子組み換え作物、コワい。

    これからは絶対「遺伝子組み換えではない」を選んで買うことにする……

さて、ここからが「本当はもっと怖い遺伝子組み換え作物の裏事情」


表示に関する大問題です。


前述の通り、日本で流通・販売を許可されている遺伝子組み換え作物は、


  • 「大豆・トウモロコシ・菜種・綿実」: 主に流通しているもの
  • 「ジャガイモ・てんさい(砂糖大根)・アルファルファ・パパイヤ」: ほとんど流通していないが許可はあり

全8種(作物では。他、カーネーションとバラも許可されています)。

これに限り輸入・流通・加工・販売OK。


日本での栽培は禁止されてはいませんが、現在実験的に行われているものはあるものの、商業的な栽培はなされていません。

つまり、


「遺伝子組み換え作物」=「輸入物限定」


あくまで現時点(2018年4月)では、ですが、このようになっているのですね。


ですので「国産」と表示されたものであれば「遺伝子組み換えのものではない」ということになります。


では上記8種の作物について国産もしくは「遺伝子組み換えでない」表示(は任意ですので表示されていないものもあります)のものを選べば間違いないのか、というと、ここに思わぬ落とし穴があるのです。


表示義務がある遺伝子組み換え作物は、以下の通り。


  • 「遺伝子組み換え」
    → 遺伝子組み換え農産物、またはそれを原材料とする加工食品
  • 「遺伝子組み換えのものを分別」
    → 分別生産流通管理が行われた『遺伝子組み換え』農産物、またはこれを原料とする加工食品
  • 「遺伝子組み換え不分別」
    → 遺伝子組み換え農産物と組み換えていないものとの分別が行われていない農産物、またはそれを原材料とする加工食品

任意表示となるものには、上記の「遺伝子組み換えでない」の他、


  • 「遺伝子組み換えのものを分別」
    → 遺伝子組み換えのものとの分別がなされている『非遺伝子組み換え(従来の品種)』農産物、またはそれを原材料とする加工食品

任意表示の「分別」は従来農産物、表示義務のある「分別」は遺伝子組み換えのものに対して。


ちょっとややこしいのですが、このようになっています。

(※「分別生産流通管理」:「IPハンドリング」とも呼ばれ、遺伝子組み換えのものと、そうではない農産物を、流通・生産・加工の各段階で、混入が起こらないように管理、その証明が書類などで明らかにされていること)


ただし、


「わざとじゃなければ5%以下の混入は、しょうがないので許容範囲ってことで認めますよ。表示しなくて良し」


これが日本での許容率。

欧米では0.9%以下です。


緩い……


さらに、


「加工後に組み換えられたDNA及びこれによって生じたたんぱく質が残存しない加工食品に関しても表示義務なし」


検査をしても検出ができないもの、例えば「油」や「醤油」などについてです。

これらは原材料に大豆や菜種が使われていますが、加工する過程で遺伝子やたんぱく質が完全に分離・除去されてしまうのですね。


だから検出できない。


仮に「遺伝子組み換え大豆」「遺伝子組み換え菜種」を使った醤油や食用油であっても、その検出が技術的にできないため「表示しなくて良し」というシステム。


日本は「スーパー」が付くほどの輸入大国です。

例えば「大豆」ではその輸入率は90%以上。

そして、その7割を占めるのがアメリカからの輸入。

そのアメリカでは大豆の90%以上が遺伝子組み換え。


── それでも表示義務なし。


すみません。まだ続くのです。


「主な原材料に使用されていない加工食品についても表示義務なし」


この「主な原材料」が曲者。


  • 加工食品のすべての原材料のうち、重量が上位3位までのもの
  • 重量が3位までのもので、かつ原材料に占める重量の割合が5%以上のもの

これらに当てはまらなければ、いいのです。

ちょっとくらい入っていてもOK。表示義務なし。


もう、緩いというかヒドい……


「遺伝子組み換え」
「遺伝子組み換え分別」
「遺伝子組み換え不分別」

「遺伝子組み換えではない」


これらの表示をそのまま信用していたら、気づかないうちに結構な割合で「遺伝子組み換え作物、またはそれを原材料とした加工食品」を口にすることになりかねない仕組みになっているのです。



最後に「家畜の飼料」


こちらについても、食品と同等の安全基準が設けられてはいます。


  • 家畜に対する安全性
  • 畜産物の人への健康への影響

これらの安全確認の取れていない遺伝子組み換え作物は輸入も流通も当然許可されません。


ですが、その基準をクリアしている遺伝子組み換え作物を家畜の飼料とすることは問題なし。

そしてほとんどの飼料には遺伝子組み換えのものが使われています。


「遺伝子組み換え作物を飼料に育った豚肉」


などの表示義務も当然ありません。

家畜の多くは、これに当たるにも関わらず、です。


「家畜の飼料」「その畜産物」についての(飼料とされる遺伝子組み換え作物の)安全基準は満たされています。

かといって「遺伝子組み換え作物は一切口にしたくない」という思いまでが満たされるわけではない……



…………

とはいうものの、


  • 食品としての安全性について: 食品衛生法・食品安全基本法
    → その上で、輸入・販売が許可されるには「厚生労働省」の安全性検査を受ける
    → 従来の食品同様の安全性の確認(食べても安全)がなされたものであることが条件
  • 飼料としての安全性について: 飼料安全法
  • 生物多様化の影響について: カルタヘナ法

    (※「カルタヘナ法」: 野生動植物・微生物の減少・絶滅、従来の種が交雑種に置き換わることはないか、などについて、遺伝子組み換え作物等への必要な取り扱いを定めている法律)

野放しになっているわけではなく、上記の法律に基づき、安全性の評価などもしっかり行われてはいるのです。

もの凄く恐ろしい作物や、その加工品が出回っているわけではない。


ですが、あまりにも不透明部分が多いのも事実です。


だからこそ、


「これは遺伝子組み換えではないですよ!(だから安心して買ってください!!)」


表示は任意であるにもかかわらず、多くの食品に記されている。

(※ こう書かれていても抜け道があるため厳密には……なのですが)


つまり、これは私たち消費者の心理を考慮した結果なのですね。


遺伝子組み換え作物の立ち位置は、消費者の心情的にはここ。

ただし、だからといってすべての食品がその思いに応えてくれているわけではないのが、現在日本での「遺伝子組み換え事情」となっています。




遺伝子組み換えの「メリット・デメリット」をまとめる!

政府が許可しているのだから大丈夫!


この考えもアリです。

先ほどもチラリと書きましたが、デメリットとされる遺伝子組み換え作物の問題点と、報告された健康被害等の因果関係は完全に立証されているわけではありません。


また、一部巨大企業がその開発・販売を独占していることは問題ですが、生産者・消費者・販売者にとってメリットになる部分も多いのです。


ただし、デメリット部分をクリアできれば、ですね。



── では最後におさらいです。

改善すべき課題点(問題点)、その上で期待される有用な部分をもう一度まとめていってみましょう。


「デメリット」(問題点)

  • 人体への健康被害
  • 「種(タネ)」の特許権等、一部大手企業による農業生産の独占・支配への懸念
  • 生物多様性への影響(自然環境を破壊も含め)
  • 食品表示義務についての不透明さ

大きくまとめれば、このような感じ。


日本では(現在)商業的な栽培がおこなわれていないため、上記の問題点の中でも消費者サイドの不安が大きなものとなっています。

ですが、栽培している地域は、もっと深刻な不安を抱えていることになるのですね。

「メリット」

  • 農作業の手間が省ける
  • 収穫量が増える
  • 使用する農薬・殺虫剤・水などの量を減らすことができる
  • 病気になりにくい品種
  • 腐りにくい品種
  • 成長の早い品種
  • 従来のものに比べ栄養価の高い品種
  • 今まで栽培のできなかった環境下でも丈夫に育つ品種
  • アレルギーの原因となる物質の少ない品種
  • 花粉症の緩和等に効果のある品種 (などを作ることができる)

色々なメリットもあるのです。




終わりに……

「遺伝子組み換え」を英語に直訳すると「遺伝子操作」。

こう表現すると背徳感が倍増します。


遺伝子組み換え作物が、世界的な食糧問題解決の糸口になる、というのは本当です。

ですが「今まで栽培不可だった土地」が豊かではなかった場合、さらなる格差が広がる問題もあるのです。

力のある農家が利益を得、それ以外の小農民はその土地を買い上げられ失うことに……


せっかくのメリット部分がぜひ活かせるよう、もうちょっと何とかならないものか、と、かなり本気で思っています。

現在の日本で「遺伝子組み換え」食品を何がなんでも口にしないようにするためには、有機野菜や自然食品を取り扱う宅配サービス等を利用するなど、相当な慎重さが必要となってきます。


ですが、そうであっても家畜の飼料の問題なども出てきてしまいます。


うーん……


な現状なのです。


「ゲノム」に関しての解明・研究は現在急ピッチで進められています(遺伝子組み換えに関係のない医療などの分野でも)。

そちらにも期待です。


どうにもデメリット部分の多い遺伝子組み換えですが、今後改善されていくことを願いつつ、皆さまの「ちょっとスッキリ」にも多少なりともお役に立てていたらうれしいです。



今回も長文に最後までおつき合いいただき、感謝です。

ありがとうございました。


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