「マイナンバー通知カード」っていうのに「マイナンバー」が書いてあるけど、このカードが「マイナンバーカード」なんじゃないの?
それが「マイナンバー」なのですが、それは「マイナンバーカード」じゃないのです。
……?
2016年1月1日にスタートした「マイナンバー制度」。
前年の15年末までには届いているはずの、緑っぽい色の、薄っぺらくて失くしてしまいそうな紙に記載されている番号が「マイナンバー」。
全国民に割り振られた「個人番号」です。
番号つけられた……?
……はい。番号、ついてます。
何となくイヤな感じもしますが、これは既存の制度なので簡単にはどうにもなりません。
そして「マイナンバーカードの申請」ですね。
こちらに関しては現在、するもしないも個人の自由。
つまり、
「マイナンバーカードを作っても作らなくても、すでに個人番号(マイナンバー)を持たない日本国民は存在していない」
(※ 外国の方でも長中期在留者・特別永住者など、住民票がある場合にはマイナンバーが割り振られます)
このスタート地点は揺るがないため(現時点では)、マイナンバー制度においてその先の選択肢は「マイナンバーカードを持つか持たないか」だけなのです。
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「マイナンバーカード」を作ると「マイナンバー」が使えるようになるの?
「使えるようになる」って、どこで使うの?
っていうか、マイナンバーってなに? で、何のために一人ひとりに割り振ってるの?
何に個人番号が使われてるの?
……いったい政府は何考えてるんだ!
── 色々考えているのだとは思うのですが、「マイナンバー制度」についても「マイナンバーカードを申請すると何がどうなるのか」についてもよくわからない、というのはちょっと不安。
マイナンバー制度とはどのようなものなのか?
「マイナンバー」と「通知カード」「マイナンバーカード」の関係と違いは?
なども含め、申請することで得られる「メリット・デメリット」について紹介いたします。
皆さまの「そういうことなら申請しない(する)!」の判断とモヤモヤ解消に、少しでも役立てましたら幸いです。
「マイナンバー制度」ってなに?
「行政の効率化」「公平・公正な社会の実現」
「国民の利便性の向上」
を目指し、利用範囲を、
「税・社会保障・災害対策」
の分野に限定して導入されたのが「マイナンバー制度」です。
……非常にわかりにくい。
簡単に言ってしまいますと、上記の範囲に関して掲げられた目的を実現させるために政府が行ったのが、
「これまで各行政機関ごとに管理していた国民の情報を、共通の個人番号で統一してしまおう」
さらには制度の導入に併せ、
「行政機関だけでなく、その利用範囲を総務大臣に認められた民間事業者まで広げよう」
というもの。
そして、この統一された番号が「マイナンバー」、国民一人ひとりに付与された12桁の個人番号です。
それぞれの情報を一つの番号で管理できるようになれば、各機関同士での照合や確認作業がスムーズに、かつ間違いなく行うことができるようになるのですね。
また、所得や行政サービスなどからの受給状況も把握しやすくなるため、脱税や不正受給などの防止にもなる。
本人確認にミスがあり、年金が受け取れない、などといった大問題も個人番号に統一することで、防ぐことができます。
つまり「税・社会保障・災害対策」の分野における情報を効率的に管理。
異なる機関が保有している情報が誰のものであるか、といった確認作業に活用されているのが「マイナンバー」。
これが初めの二つの目的、
「行政の効率化」
「公平・公正な社会への実現」
に当たる部分です。
不正を行っていない大多数の方たちにとって、ダイレクトに「メリット」、とはなりませんが、受け取れるものが受け取れなくなる、という不安が少なくはなります。
とはいうものの、この2つはどう考えても「行政サイドのメリット」。
行政側のメリットであっても別にいいのですが、問題はそのために、
- 個人情報漏洩のリスク
- 国や自治体によるプライバシーの侵害への懸念
これはもはや「カードの有無」の問題ではなく、制度自体に対してのものなのですが……
安全です、といわれても、ハッカー(クラッカー)や情報屋など、裏稼業の人たちもたくさんいるからですね。
「絶対の安全」は保証されていない。
漏れたとしても、自分の個人情報程度ではそれほどの悪さはできないだろう、というのも確かです。
が、個人情報を使って不正に買い物をされてしまう、いつの間にかとんでもない額の借金を背負っていた(身に覚えなし)などといったことになると、話は変わってきます。
個人情報を利用されるというより、不正を行う個人として利用されてしまう、といった感じ。
まったく褒めていませんが、悪いことをする人たちというのは、そういった部分に関しては非常に勤勉です。
「税・社会保障・災害対策」に関係のない(マイナンバーカードの利用範囲とはされていない)様々な個人情報までもが、個人番号をもとに手に入れられてしまうかもしれない。
可能性だけだとしても、不安は残るのです。
任意ではありますが、2018年1月には銀行口座との紐づけ制度も始まっています。
税務調査の効率化などを目的としているそうですが、このように利用範囲が徐々に拡大していけば、いずれ個人の資産状況等をかなりの正確さで把握できる体制が整えられていくはず。
先ほども書きました通り、脱税や不正受給の防止には役立ちます。
そもそも不正を行うことがダメなのであって、それを解消する手段を講じることはもっともな話です。
ですが、
どこまでプライバシーに踏み込んでくるの?
という問題と、
その情報が洩れたらどれだけの大打撃になると思っていますか?
と聞きたくなる気持ちもあるのです。
2007年に起きた「年金記録問題」に後押しされた形で導入に至ったといわれている「マイナンバー制度」。
すでに始まっている制度ですが、情報漏洩、プライバシーに対する問題は、まだまだ十分にクリアできていないのでは、と思っています。
──「マイナンバーカードの申請による」というタイトルから外れ「マイナンバー制度」についての話を長々と続けてしまいました……
が、上記マイナンバー制度のもう一つの目的「国民の利便性の向上」が「カードの申請」に関わってくるのですね。
……といいますか、そこにしか関係してこないのです。
では続いて「マイナンバーカードを申請する・しない」では、何がどのように変わってくるのか、について行ってみましょう。
申請することで得られる「メリット」は?
残っている「導入の目的」はあと一つ。「国民の利便性の向上」
これには、国民にとっても少しだけわかりやすいメリットが出てきます。
- 個人番号の証明
- コンビニでの各種行政書類(証明書)の取得
- 各種手続きのオンライン申請
- 役所での手続きの簡素化
- 納税に関わる時間の短縮 など
……ちょっと便利です。
いや、頻繁に住民票等を取りに行く必要のある方にとっては結構便利。
税金の申告・申請等がオンラインで行えることもフリーランスで働いている方などにとってはそれなり、もしくはそれなり以上のメリットになるかと思います。
そして前述の通り、これらのメリットを受け取るための条件が「マイナンバーカードの取得」なのですね。
送られてきた「通知カード」に「マイナンバー」は記されていますが、それだけではダメ。
要するに「マイナンバー通知カード」というのは、本当に「通知」だけしてくれているカード。
「あなたの個人番号はこれになりました」
を伝えるためだけのカードです。
その先は、
「この番号を使って、いくつかのサービスを受けたいのであれば、通知された番号を申請してくださいね」
「とりあえず活用法によっては案外便利になることもありますよ」
問答無用で「マイナンバー」は全国民に割り振られましたが、そのメリットを享受できるのは「マイナンバーカード」を持っている人だけ、という仕組み。
──「番号」があるんだから、カードって必要なくない……?
申請しなくても「マイナンバー」を使うことはできます。
が、
「でもマイナンバーカードを持っている方が、ちょっと楽」
この「ちょっと楽」な点が「国民の利便性の向上」に当たる部分。
これには「マイナンバーカード」のややこしい仕組みが絡んでくるのですが、少しだけ「あ、なるほど」に繋がるポイントともなっていますので、極々簡単に確認です。
簡単にカードの仕組みをご紹介
申請後、しばらくすると「マイナンバーカード」がやってきます。(※ マイナンバーカードは、郵送、スマホ、パソコンのいずれかで申し込めます。
郵送なら「通知カードの下部分」に当たる申込書に必要事項を記入、顔写真を貼ってポストに投函。
スマホの場合では専用フォームからの申し込み。顔写真はスマホで撮ったものがそのまま使えます。
パソコンも専用フォームから。写真はデジカメ等で撮影したものを利用するなどしてください。
申請自体には難しいことは何もありません)
まずはカードの表の面。
住所、氏名、性別、生年月日が記載され、申請の際に撮った顔写真も貼られています。
運転免許証のような見た目ですね。
見た目が似ているだけでなく「身分証明書」として使えるということも免許書同様。
健康保険証など、顔写真のついていないものを身分証明書として使うには、他に本人確認のできる何らかの書類が別途必要になりますが、写真付きのマイナンバーカードでは、その手間が省けます。
「通知カード」のままでは、これができない。
健康保険証の時と同じように、本人確認のための他の書類と併せて、初めて身分証明書となります。
マイナンバーカード取得の1つ目の具体的なメリットは、
「身分証明書として使える」
カードの表面の役割です。
そして若干ややこしいことになっているのがカードの裏面。
- マイナンバーが記載されている
- ICチップが搭載されている
この2つは全くの別物なのですね。
マイナンバーの情報がICチップ内に記録されているわけではなく、それぞれがそれぞれに機能を持っています。
まずは「マイナンバー」。
「むやみに知られないようにしっかり管理をしてください」と言われているのがこれ。
前述の「社会保障・税・災害対策」の分野で、行政等が情報を効率よく、ミスなく管理するために使われる番号です。
利用できるのは行政機関や総務大臣に認められた民間事業者のみ。
それ以外の事業者等がカードの裏面をコピーしたり、番号を収集・保管することも禁止されています。
そして「ICチップ」。
こちらには「マイナンバー」は情報として記録されていません。
ICチップの役割は「個人認証機能」。
チップ内に格納されている「電子証明書」というものを読み取ってもらうことで個人を認証できるシステムです。
だから、
- 記載されている「マイナンバーカード」で: 個人番号が証明できる
- 搭載されている「ICチップ」で: 本人確認ができる
住民票に基づき、市区町村長がしっかりと本人確認を行ったうえで、住民一人ひとりに発行されるものです。
つまり、
「私○○は、何年何月生まれの、どこそこに住んでいる男性(女性)です」
といったことが市町村長の厳格な確認により認められている「本人」であることの証明です。
記録されているのは「住所・氏名・性別・生年月日」といった個人に関する4つの基本情報。
改ざんやなりすまし等の不正を防ぐ仕組みが構築されているため、電子証明書を使用してのネット上での本人確認や電子申請などが可能になるのです。
これが2つ目のメリット。
マイナンバーはあくまで「社会保障・税・災害対策」の分野で活用される行政事務などを効率的にミスなく行うための統一した個人番号。
ICチップ内の「電子証明書」に記録されているのは個人に関する4つの基本情報です。
上記の通り、電子証明書とマイナンバーは別物。
そのため行政機関だけでなく総務大臣に認められた事業者に限られますが、民間でも活用可、となったのです。
さらにはICチップ内にはその他の空き領域もあるため、今後新たに利用できる民間事業者も増えていく見込み。
利用範囲も広がり、便利にはなるのですね。
また「マイナポータル」の利用が可能になる、といったメリットも挙げられます。
こちらは2017年7月から利用が開始されたサービス。
ご自分の情報がどのようにやり取りされているかの情報や、行政機関・民間企業からの個人向けのお知らせを受け取れる、地方公共団体による子育てに関するサービスの検索、またはオンライン申請が可能に、などなど、様々なサービスを受けることができるようになります。
これも通知カードによる「マイナンバー」だけではムリ。
利用には「マイナンバーカード」が必要です。
個人番号はすでに割り振られているわけですので、見方によっては、こうした情報(特にご自分の情報のやり取りの履歴)が確認できる、というのはむしろ安心感に繋がることかもしれません。
(※ 利用にはアプリのインストールとカードの読み取り機能のあるデバイスが必要。ちょっと面倒くさいです。これらについての整備は現在進行中)
デメリットは?
では「デメリット」はどこにあるのか。「マイナンバー制度」のデメリットではなく「マイナンバーカードを申請・取得すること」でのデメリットは、
「紛失のリスクが高くなる」
実際にはプライバシー性の高い情報はマイナンバーカードには保存されていません。
情報を不正に読みとろうとすれば、ICチップ自体が自動的に壊れる措置もとられています。
電子証明書でできることは、
- 署名用電子証明
→ 文書を伴う電子申請の際に、改ざんが行われていないかを確認できる仕組み - 利用者証明用電子証明書
→ ネット閲覧の際等、利用しているのが本人であることを証明
こちらの2つだけなのですね。
「公開鍵暗号方式」というシステムに守られてこれらの電子証明は行われています。
ただし、先ほども書きました通り、今後さらに多くの情報がカードに紐づけられていくことを考えますと、
「できれば持ち歩きたくない」
こうなってきますと「コンビニでの各種証明書の取得」「役所での手続きの簡素化」などのメリットが受けられない……
何より、まだスタートしたばかりの制度であることが一番の不安材料です。
この先どのようなトラブルが起こるか予想できない。
カードを取得することで得られるメリットはわかりやすいのですが、デメリットが今後どのように変化していくのかがイマイチ不透明なのです。
現段階では「社会保障・税番号制度」とされているマイナンバー制度ですが、より多くの情報が紐づけられることを考えますと、紛失・盗難などにあった場合の衝撃は、気を失うほどのレベルになるかと思われます。
すでにマイナンバーを持たない日本国民はゼロ(日本に住民票のある外国籍の方も)。
本人確認の書類が必要だったり、電子申請ができなかったりといったことは「便利ではない」だけで、通知カードのままでも、今までより不便になるわけではありません。
持つことで得られるメリットが大きい場合には申請・取得は非常に便利。
ですが、頻繁にこれらメリット部分に挙げられていることを行わないのであれば、もう少し様子を見てからでも申請は遅くないのでは……? と個人的には思っています。
マイナンバーカードの申請の「メリット・デメリット」をまとめる!
「カード申請」のメリット・デメリット、です。行政サイドではなく、個人の場合、持っていれば手続き等が簡単に行える、というのがメリット。
政府の掲げた3つの目的のうち、実際にわかりやすく享受できるのは、
「国民の利便性の向上」
のみかと思います(少なくとも現段階では)。
そしてデメリットもそう多くはありません。
「紛失のリスク」
ですね。
それ以外は持っていてもいなくても、変わらない、というのが現実。
たとえ「通知カードの受け取り」を拒否しても、個人番号の割り当てまでは拒否できないからです。
ですので逆に言えば、
「カードを申請・取得することで個人情報がより筒抜けになる」
ということもないのですね。
紛失・盗難に対する措置も講じられていますし、前述の通り、不正な読み取りに対してはICチップ自体が壊れる仕組みも備えられています。
マイナンバーをむやみに教えないことは「通知カード」の状態であっても同じこと。
ただ、役所やコンビニなどで電子申請を行うために持ち歩くのであれば「マイナンバーカード」が必要となりますので、紛失のリスクは増える。
その代わりに、自分の個人情報が行政機関等でどのようにやり取りされたかの履歴を「マイナポータル」で確認することができるようになる、などのメリットも受けることができます。
メリット・デメリットのどちらかに大幅に偏っているわけではなく、利用頻度に応じて「メリット・デメリット」が等分についてくる、といった感じ。
ですので、使う機会がそれほどないのでしたら、持っていても「身分証明書」としての利用価値しかありません。
免許証を持っていれば十分。
むしろ身分証明書が欲しいのであれば、多くの方が指摘しているように「小型特殊自動車免許」を取得した方が安全です。
(※「小型特殊免許」: 農業用薬剤散布車・フォークリフト・小型除雪車などの免許。車検も不要。ただし自賠責保険への加入は必要。比較的簡単に取れます)
とはいうものの、実際には紛失・盗難の可能性というのは、行政サイドがハッキングに合う、などでも同様に起こり得ることです。
個人情報が漏れてしまう。
そのリスクに「プラス自分の不注意など」も加わることにはなりますが、大元を攻撃されることを考えますと、カードの紛失はクレジットカードを落とすことと、さほど変わりもないような気もします。
マイナンバー制度は行政側のメリットが非常に大きい仕組みになっています。
国民にも何かメリットを、ということで付け加えられたのが「利便性の向上」。
そこを受け取ることは多少のメリットになります。
ですが、受け取らなくても今まで以上に不便が生じるわけでもない。
かといって受け取ったからと言ってそれほどのデメリットを被るわけでもないのです。
マイナンバーカードの申請をすべきか否か?
こちらについては言葉は悪いですが、本当に「どっちでもいい」なのです。
終わりに……
凄いですね。結論が「どちらでもいい」……。
ただ、
「マイナンバーカードを持つことで、何か良からぬことが起きるのでは……? 情報が丸裸になってしまうのでは……?」
のように思われがちな部分もあるのですが、それは違うのですね。
もう、この段階は「マイナンバー」が全国民に割り振られた時点でとっくに過ぎているのです。
悪いことばかりではないと信じたいのですが、
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「住基ネットでの情報漏洩の轍はどこに行った?」
「国民に対しての大規模な制度改革なのに、アナウンスが少なすぎないか?」
「紐づけはどこまで広がる?」
などなど、ネガティブなイメージが拭えない部分も多々あり……
制度に対してのモヤモヤは個人的には全く晴れていないのですが、皆さまの「マイナンバーカード申請でのメリット・デメリット」についてのモヤモヤだけでも、少し薄れていましたらうれしく思います。
今回も最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!