2017年1月より、公務員や専業主婦(夫)の方も加入できるようになった個人型確定拠出年金制度。

名前が長い上に全部漢字……ということで「iDeCo(イデコ)」というかわいらしい愛称が付けられています。
企業型・個人型ともに2001年からスタートのまだまだ新しい年金制度なのですね。
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いずれ来る老後がめちゃめちゃ心配……でも、よくわからないものに手を出して、損したりするのもイヤ……
勤務先が確定拠出年金制度を導入したのだが……退職金とかと何が違うのかさっぱりわからん……
わからないままでいるのは気持ちが悪いです……
よく耳にするようになった名称ですが、実際には「?」も多い「確定拠出年金」。
企業型・個人型、それぞれのメリット・デメリットについて解説いたします。
個人型に興味を持たれて、加入をご検討中の方、
会社に導入された年金制度がどのようなものなのか気になっている方、
とりあえずいい面と悪い面だけでも知っておきたい方、
などなど、皆さまのスッキリに、少しでもお役に立てれば幸いです。
「確定拠年金」ってどんなもの?
決まっているのは「拠出金(掛け金)」の額。将来的に受け取れる年金がいくらになるかは、運用する本人の腕(運用)次第、といったシステムを取っているのが「確定拠出年金」の制度です。
国民年金や厚生年金などの公的年金ではなく「私的年金」。
従来の年金制度では、あらかじめ決まっているのは掛け金(拠出金)ではなく、将来受け取ることのできる「給付金」の方です。
まずは簡単に年金制度について確認していきましょう。
もっとも基礎的な年金制度が「国民年金」。
20歳以上の全国民に加入義務があります。
皆さんの納める国民年金保険料を責任をもって管理運営しているのは国です。
だから「公的年金」。
そして企業等にお勤めの方には「厚生年金」。
国民年金にプラスされる形で給付される年金、これも「公的年金」です。
さて、このままですと自営業やフリーランスの方の老後のための資金は「国民年金」の給付分だけ、ということに。
それはちょっと、困る……ということで「厚生年金」に代わる年金制度として1991年(平成3年)に誕生したのが「国民年金基金」です。
これで、会社勤めの方も自営業などの方も、老後資金の差がほとんどなくなったわけですが、そもそも「公的年金」というものの現状は非常に心もとないのです。
現役世代の負担が大きく、かつ、受け取れる年齢の引き上げや、ひょっとしたらもらえないんじゃ……? という不安もかなりある。
そこで大きな企業などが採用し始めているのが、さらなる老後の安泰を目指しての措置「企業年金」です。
こちらは、ついに公的年金ではなく、民間の私的な年金制度になります。
大きく分けてその種類は2つ。
タイトルの「確定拠出年金制度」と、従来のシステムである「確定給付企業年金制度」です。
どちらも退職金のように一括して払われるのではなく、その名の通り「年金形式」で支払われます。
(原則は。一時金として受け取ることも可能)
企業が従業員の年金として銀行や保険会社など外部の金融機関と契約を結び、そこで積み立て・運用・管理を行い、退職者に年金形式で支払うのが「確定給付企業年金」。
退職金との違いは「一時金」であるか「年金形式」であるか。
そして、社外の金融機関で積み立てを行う、ということ。
退職金を廃止して「確定給付年金」を代わりに一時金として退職時に支払う企業もあるようです。
退職者が何人も重なる場合などでは、企業側もその資金繰りが大変。
その資金を事前に貯めておくこともできなくはないのですが、その分は法人税の課税対象になってしまうのですね。
「企業年金制度」を採用した場合では、積み立てているお金は全額「経費」とされ、税制上の優遇措置も受けられるようになる。
これは企業側にとって大きなメリットになります。
そしてもう一方の「確定拠出年金」。
こちらは、掛け金を(通常)企業側が負担してくれるところまでは同じなのですが、
その後の管理・運用が従業員一人ひとりに任される
という大きな違いが出てきます。
企業側の支払う掛け金(拠出金)が決まっているので「確定拠出年金」。
将来の「給付金」の額は決まっていません。
先ほど書きました通り、本人の腕次第。
退職金プラスこの制度、であればいいのですが、退職金代わりに「確定拠出年金」となった場合、将来の受給額が減ってしまう可能性もあるのです。
でも「腕次第」では、大きくその額を増やすこともできる(かも)、な年金制度が「確定拠出年金制度」です。
企業としても一昔前のようにドカンっと退職金を用意することが、難しいのですね。
「確定給付年金」は税制優遇など企業にとってメリットとなる部分もあるのですが、運用をしていくのも企業サイド。
うまくいかなければ、給付額としていた金額に達しない場合もあるのです。
そしてその穴埋めも企業の役目。
もう、アップアップなのです。
ですので、掛け金までは面倒見るけど、将来の老後資金(給付額)は自分の裁量で増やしてみてよ、というのが、実際のところ。
ただし、企業側だけでなく、実際に運用をしていく従業員等の皆さまにも節税に繋がる大きなメリットはついてきます。
そして、この税制優遇により注目され始めたのが「イデコ」の愛称を持つ「個人型確定拠出年金」です。
企業が年金制度として採用している場合には、従業員の皆さまは、強制加入となりますが、個人型は任意加入。
自営業やフリーランスの方はもちろん、冒頭にも書きました通り、2017年の法改正により、
- 「企業年金制度」のある会社にお勤めの会社員の方
- 公務員の方
- 専業主婦(夫)の方
(※ 働いているスタイル等により、それぞれ掛け金の上限額が決まっています)
……なっているのですが、
──「税制優遇」というのはそれほど魅力的なことなのか?
「イデコ」に人気(少なくとも興味)が集まる理由、そのメリットと、ないはずはないデメリットについて、まずは「個人型」からみていってみましょう。

個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)のメリット・デメリットは?
「個人型」では企業という後ろ盾がありませんので、掛け金を拠出するのも「個人」。そして、口座開設初め、運用のための管理・維持にかかる雑多な手数料も自分持ち、となります。
この手数料が結構かかるのですね。
「掛け金は受け持つから老後の資金を自力で増やしてごらん」といった感じなのが「企業型」なのに対し、「個人型」は、
「自分のための老後の資金を、自分で今から貯めておこう」
というものなので、掛け金を自分で支払うのは仕方ないとして、この手数料、というのは「個人型」のちょっと痛いところ。
まずは加入のため国民年金基金連合会に支払われる2,777円。
一時的なコストではありますが、今まで勤めていた会社では「企業型」を採用しており、転職先では扱っていない場合、または早期退職等で「個人型」に乗り換える際にもこの手数料はかかります。
さらには金融機関に開設した口座を維持していくための「口座管理手数料」。
加入者をサポートするため、とされている費用ですね。
銀行や生命保険会社、証券会社、信託銀行など、口座を開設する金融機関はご自身で選べるのですが、いずれの場合でも、その手数料は一律。
年間2,004円は絶対にかかってしまいます。
そして各金融機関ごとに変わってくるのが、運営管理機関に支払う手数料。
最近では「ゼロ」というところもあれば年間7,000円以上というところもありますので、口座をどこで開設するかを決める際の大きなポイントになります。
(※ 2,004円プラスαの分かれ目)
他、先の話になりますが、実際に年金を受け取りるときにも「給付手数料」がかかります。
つまり、
- 加入時: 事務手数料
- 運用中: 口座管理手数料
- 年金受給時: 給付手数料
受給時も加入時の事務手数料同様、金融機関による金額の差はほとんどありません。
賢い運用にはまずは口座管理手数料の安いところを選択することが大事。
最終的な給付額に結構な差が出てきてしまいます。
さて、確定拠出年金の最大のメリットは、やはり大きなリターンを狙えること。
ということで「投資信託」を運用商品とするとします。
(※ 投資信託: 専門知識と投資資産家からの情報に基づき資産運用を行う投資のプロに運用を任せられ、分散した投資を行うこともできます)
今度は「信託報酬」という名の投資信託の管理手数料もプラス。
そして、大きなリターンが望める、ということは、大きなリスクも背負う、ということ。
イデコではかなり優良な商品がラインナップされているため、「益」となる可能性も高いのですが、やはり投資は投資。
絶対はありません。
しかもこの先時代がどう動くのか、という不確定要素もある。
「元本割れ」の可能性が最も高いのは「投資信託」を選んだ場合となってしまいます。
それはイヤだ……という場合には「定期預金」での積み立てがおススメ。
金利0.01%の時代なので、大きく資金が増えることは望めませんが、大きく老後資金が減ってしまうこともありません。
── 手数料がそれなりに掛かって、大きなリターンを望むには元本割れのリスクがあって、だったら「定期預金」がおススメって……なら普通に「定期預金」でよくない?
でもいいのですが、そこで発揮されるのが、イデコの人気を支える「税制優遇」の措置。
イデコではない、通常の「定期預金」の場合と比較してみましょう。
上記の通り、低金利時代真っ只中の現在、それでも定期預金で運用益(資産の運用によって得られた収益)には20.315%というとんでもない税金がかかるのです。
……金利は0.01%……
ですが、イデコに限らず確定拠出年金制度を利用した場合には非課税。
少なくとも、この分はお得なのです。
また、同様に運用益が一定金額の範囲内ではありますが、非課税となっているNISAなどと比べてもイデコは優秀。
(※ 通常、投資商品からの利益にも定期預金と同じ20.315%の税金がかかります)
運用益(非課税)だけでなく、
- 拠出時
→ 掛け金は全額所得控除。所得税・住民税が軽減される - 受取時
→ 年金形式で受け取る際には「公的年金等控除」
一時金として受け取る際には「退職所得控除」が受けられる
が、確かにこれら控除は魅力的なのですが、その分が口座に振り込まれるわけではありません。
勝手に節税にはなっていますが、その分を普段の生活で使ってしまっては、将来的なメリット、とすることはできないのです。
(※「運営益」は非課税となった分を、そのままプラスの運用費として活用できます)
── じゃあ、その浮いた分を「定期預金」に……あ、20.315%……
イデコは「投資」としてとらえなくても税制面で非常にメリットがあるのですが、「これは自分の老後のための資金の積み立てなんだ」と常に意識していないと、何となくお得な「定期預金」となってしまいます。
それでも、国民年金だけよりはずっと老後は安泰。
また、厚生年金のある方も、プラスαの上乗せ。
老後の資金を得るために活用することは大きなメリットになるはずです。
ただし「個人型」の場合、掛け金を拠出しているのは「自腹」で、です。
税制優遇のみを「メリット」として加入を早まってしまいますと、思わぬ「え~! それは困る!」にも陥りかねません。
その一つが、
「最短で60歳まで引き出せない」
「年金」ですので当然と言えば当然なのですが、生きていればまとまったお金がどうしても必要になってくることもあります。
お子さんの進学やご家族が大きな手術をするかもしれない。
そんな時でも、引き出すことができないのですね。
イデコの口座には今まで積み立てたそれなりのまとまったお金があるのに、あるだけです。使えない。
ですので「税金が節約できるから♪」というノリで将来設計に必要な分まで掛け金として使ってしまいますと、結構な確率で地団駄を踏みたくなる状況が待っています。
金銭的にある程度の余裕があり、そこに手をつけなくてもしっかり生活できる資金があって、初めて「老後資金」として「個人型確定拠出年金」はありがたいものとなるのです。
一旦加入してしまうと、60歳まで引き落とせないことに加え、原則イデコは中途解約もできません。
ただし、どうしても掛け金が捻出できない場合には、引き落としを一時停止することは可能。
が、その間も上記の手数料は引かれ続けます。
年に1度だけですが、掛け金の額を変更することはできますので、加入をお考えの場合は、まずは小額からスタートし、様子を見ながら、家計とも相談しつつ、徐々に増やしていく(もしくはさらに減らしていく)というスタイルが安心かと思います。
ちなみに最も安い掛け金は5,000円。
1,000円単位で増やしていくことができます。
また、2018年1月からは月単位ではなく、最終的に年単位で決められた金額に達すればいい、と変更されていますので、余裕のある月にまとめて支払うことも可能です。
さて、先ほど書きました通り、掛け金は全額所得控除となりますので、多く拠出するほどお得なのは確かなのですが、働いているスタイルにより、異なる上限額は設定されています。
- 自営業やフリーランスの方など、国民年金加入者の場合
→ 月額最高6万8,000円まで(国民年金基金や他、付加保険料との合算で) - 会社員の方等、厚生年金のある企業にお勤めの場合
→ 月額2万3,000円から5万5,000円(後述しますが「給与内枠選択制」を取っている場合)まで - 公務員の方
→ 月額1万2,000円まで - 企業年金のある会社にお勤めの場合
→ 1万2,000円まで
(※「企業型」を導入している会社にお勤めの場合は、規約により「個人型」への加入の可否が決められている場合があります。ご確認ください。
また、会社からの掛け金に運用する従業員自らプラスの拠出ができる「マッチング拠出」の制度がある場合には「個人型」への加入はできません) - 専業主婦(夫)の方
→ 月額2万3,000円まで
こうしてみてみますと「それほどの金額でも……」な気もしますが、年間に直すと一番掛け金の多い自営業の方(最高額に達する条件を満たせば、ですが)では81万6,000円。
最少額の公務員の方でも14万4,000円です。
また、専業主婦(夫)の方にはそもそも所得税を支払う義務がないため「所得控除」については何のメリットもありません。
が、運用益の非課税、受取時の控除対象となりますので、それなりのメリットはあるのです。
これが60歳まで滞ることなく続いたら……ちょっと老後が明るくなる気もします。
そして受取開始時期です。
60歳から70歳の間にスタート、ということになっていますが、実は選べる時期は加入している期間によっても異なってきます。
通算加入期間と受給開始時期は以下の通り。
- 10年以上: 満60歳から受給開始可能
- 8年以上10年未満: 満61歳
- 6年以上8年未満: 満62歳
- 4年以上6年未満: 満63歳
- 2年以上4年未満: 満64歳
- 1か月以上2年未満: 満65歳
(※ 5年以上20年以下の期間、年金として受け取れる「有期年金」として、もしくは「一時金」、または両方を併用など、受け取り方法を選択することができます。
一部金融機関では「終身年金」としての扱いもあり)
加入は完全に任意ですが、もしも「入る!」と決めたのであれば、早めに手続きを取った方がより老後の安泰に近づけるかと思います。
そして最後。
これは考え方によってメリット・デメリット、どちらと捉えることもできるかと思うのですが、ある程度は「投資」の知識を身につける必要がある、ということです。
ご自身で運用商品を選ぶことから始まるのが確定拠出年金。
何をどう運用していけばいいのかわからない……けど加入しちゃった……
という方は想像以上に多いのですね。
無難に税制上のメリットだけを狙う「定期預金」もありですが、まったく知らない世界にまったく知らない状態で飛び込んでいくのはやはり無謀。
加入するのであれば「いい機会だ。投資もちょっとかじってみよう」くらいの気持ちは持っていることが、思わぬリスクを避けるためにも大事なことなのかもしれません。

企業型確定拠出年金のメリット・デメリットはこちら
こちらは前述の通り、「企業が掛け金を拠出」
「従業員はその資金をもとに老後の資産運用を行う」
「個人型」でデメリットとされていた手数料も会社持ち。
これはラッキーです。
が、会社側は掛け金を拠出してくれるだけではなく、金融機関の選択までしてくれてしまいます。
楽ではあるのですが、運用商品は各金融機関ごとにだいぶ変わってくるのです。
選べるのはその中から。
口座開設のための事務手数料や口座の維持・管理等の手数料は会社が負担してくれますが、投資信託での信託報酬などの手数料はご自分で負担することになります。
会社の選んだ金融機関の商品に、この手数料が高いものばかりが入っている場合には、避けようがないのですね。
「個人型」であれば、その金融機関を選択しなければいいだけなのですが……
「これは魅力的!」と思ったら、まずは信託報酬等、自己負担しなければならない手数料を確認してみてください。
「会社が金融機関を選択」というのは、場合によっては大きなデメリットをもたらす原因ともなってしまうのです。
他、「60歳まで受け取れない」のは個人型の場合と同じ。
転職等の場合にも、退職時に一旦リセットされることなく、老後資産を転職先に持っていける、というメリットもあります。
ただし、転職先が「企業型」を採用していない企業であった場合には「個人型」に資産を引っ越す(移換)等の手続きを行う必要あり、です。
こうした場合でも、解約はできません。
(※ 加入期間や資産の残高等、定められた条件に当てはまる場合に限り、60歳前でも脱退一時金を受け取ることはできます)
「企業型」は「個人型」に比べ、掛け金が多くかけられるものメリットの一つ。
最高額は年間66万円。
個人型では27万6,000円です(厚生年金のある企業にお勤めの会社員の方の場合)。
しかも、掛け金会社持ち……
企業が制度を採用していれば加入せざるを得ないので、ここで何を言っても仕方がないのですが、転職しても、そのまま老後の資産運用ができる、といったメリットは、その転職先によっては、むしろデメリットに近いものになってしまう場合もあるのですね。
逆に「個人型」に加入していた方が「企業型」を導入している企業に就職・転職した場合には、企業型に資産を移すことが可能。
転職等をお考えの場合には、現在まで積み立ててきた資金の移換手続きについても、一度ご確認いただければと思います。
また、積み立てを止め「資格喪失届」を提出することで金融商品の運用だけを行う「運用指図者」となることもできます。
が、この状態では実際には何もすることができません。
そのまま手数料のみ支払い、そのまま資産を口座に置いているだけの、いわゆる「塩漬け」の状態です。
(※ その後、再び積み立てを続けることができるようになった場合には、所定の手続きをすることで、再び加入者として運用を続けていくことができるようになります)
さて、先ほど拠出金の上限のところでチラリと書いたのですが「給与内枠選択制」というシステム。
これは現在支払われている給与の一定額を「生涯手当金等」という名目で確定拠出年金に回そう、というもの。
その範囲内でいくらを掛け金として拠出するかは、従業員に任されます。
退職金は出せないけれど、それでも従業員の方々に何とか老後の資金を貯めてもらえれば(運用は自力で、となってしまって悪いけど……)、ということでつくられた仕組みです。
従業員の方の選択肢は、
- それを退職金の前払いとして受け取る(一部を受け取り、残りを掛け金にするのも可)
- 確定拠出年金として積み立てる
- 前払いとして受け取る
→「給与」とみなされるため、税制優遇の対象にはならず、課税対象に - 掛け金として積み立て
→ その分は税制優遇の対象に
(※ ただし、給与が減る分「厚生年金」の受取額や雇用保険の基本手当等、給与額に合わせて支払われる手当は減ることになります)
月々の給料を減らしたくなければ「今まで通り変わらず」「老後資金を形成したいのであれば、自分で何らかの手段を講じる必要あり」。
これは「個人型」加入への考え方に通ずる部分でもありますね。
自己責任での「老後資金確保」のための制度。
企業の負担してくれる掛け金は、いわば退職金の前払い。
負担してくれる企業を持たない自営業の方などは、現役時代のご自身がその役を引き受ける。
老後の自分のために「確定拠出年金の掛け金」という形で前払い(積み立て)をしていく感じです。
最後までしっかり面倒見てほしい、とは思いますが、時代が時代なので、もはや会社任せ、といかないところが非常に残念。
高齢化や経済不安、遠くない将来には年金システム自体が破綻するのでは? との懸念も徐々にリアルになっているのが現状です。
これほどまで「そろそろさすがにマズい」の状況になっていなければ、おそらく誰も考えなかった「老後の資金作り」の方法が「確定拠出年金制度」。
元本割れのリスクは常について回り、老後に受け取ることのできる金額が確定していないという不安もあります。
が、税制上の優遇も受けられ、投資信託など、ハイリスクな商品を選べば、老後資金が通常の定期預金等では考えられないような増え方をすることも考えられる。
ですが、現在そこまでの商品があるのか、今まで投資に関わってこなかった私たちが、それらの商品を見極めることができるのか、といったモヤモヤも残るのです……

確定拠出年金のメリット・デメリットをまとめる!
確定拠出年金はギャンブルではありません。しっかりとメリット・デメリットを押さえておけば、大儲けのようなことはないかもしれませんが、小儲け程度には老後資産を増やすことも可能。
(※ ただしそれには投資の知識が少なからず必要)
最後に損だけはしないよう、もう一度「メリット・デメリット」をまとめていってみましょう。
♢「個人型確定拠出年金(iDeCo)」
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★メリット
- 「掛け金」は全額所得控除
→ 所得税・住民税が安くなる - 「運用益」は非課税
→ 本来なら掛かるはずの20.315%の税金が非課税となるため、その分も含め運用費として使うことができ得る - 年金受給時にも税金の控除が受けられる
→ 一時金として受け取る場合には「退職所得控除」
年金形式で受け取る場合には「公的年金等控除」の対象に。 - 加入の際、一時的な支払コストとなる「事務手数料」
- 口座を運用していくための「口座管理手数料」
- 年金受給時に必要となる「給付手数料」
→ 特に毎月かかる「口座管理手数料」がネック。
この手数料の安い金融機関を選ぶこともポイントとなってきます。
◎税制面での優遇
◎60歳まで原則引き出すことができないため、老後の資金を他のことに使わずに確保しておくことができる
◎ハイリスク・ハイリターンを狙うことも可能
☆デメリット
◎掛け金・運用のための手数料は自己負担
◎まとまったお金が必要となったときでも、60歳になるまで口座の資金を使うことができない
◎ハイリスク・ハイリターンのものを選ぶと、老後の資金が大幅に減ってしまうことも
◎基本的にすべて「自己責任」での資産運用になる
♢「企業型確定拠出年金」
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★メリット
- 退職金の場合: 会社の都合で「なし」となってしまう可能性も
- 公的年金の場合: 受給年齢の引き上げや減額もあり得る
- 投資信託の商品を選んだ場合「信託報酬」等は自己負担
- この手数料の高い金融機関を会社が選んでいることも
- 定期預金などの商品を選んだ場合: 1,000万円まで国が補償
- 保険会社の商品を選んだ場合: 契約者保護機構の範囲内の補償に(最大9割)
- 投資信託を選んだ場合: 契約者から預かっている資金は会社のものとは別に管理されているため、新しい信託銀行にはなるが資産は守られる
→ 運用リスクの高い商品の方が、機関が破綻した場合などの資産を失うリスクが低い
◎掛け金・口座管理手数料は会社が負担してくれる
◎運営益は「個人型」同様、非課税となるため、課税されなかった分も元本にプラスしての運用ができる
◎60歳まで引き出せないメリットも「個人型」同様
◎ハイリスク・ハイリターンを狙えるのも「個人型」と変わらず
◎「個人型」に比べ多くの掛け金をかけることができる
◎仮に会社の業績が悪くても、老後資産を守ることができる
◎転職先に「企業型」の制度が最あれば、退職時にリセットされずに引き続き老後の資産運用が行える
☆デメリット
◎金融機関を自分で選ぶことができない(その中から商品を選ぶことしかできません)
◎「60歳まで引き出せない」「ハイリスク・ハイリターン」も捉え方によりデメリットに
◎口座開設を申し込んだ金融機関が倒産などの場合、補償が全額ではない場合もある
◎基本的にすべて「自己責任」

終わりに……
確定拠出年金の運用の仕方は自由。ですが、「自分で増やしていく」が前提であるなら、どうしてもリスクの大きい投資信託で、ということになってしまいます。
最悪大幅に老後の資金が減ってしまうことも。
定期預金や保険会社の商品であっても、実際には元本割れを起こすこともあります。
また、現在は凍結状態が続いていますが「特別法人税」の問題も残っています(平成32年までは凍結が確定。3年ごとにこの期間は更新され続けています)。
2001年にスタートの確定拠出年金制度よりもはるか昔(1990年)にはすでに課税は凍結されているにも関わらず、未だ「廃止」とはなっていません。
あくまで「凍結」。
これが再開したら、もう多少のメリットは丸潰れです。
運用益にではなく、積立残高に1.173%の税金が掛かる、というのが「特別法人税」。
「法人税」となっていますが、対象は「個人型」にも及びます。
利益にかかる20.315%の税金が非課税でも、単位の大きな残高に課税されてしまってはたまりません。
さすがに現状での再開はあり得ないかと思いますが、これから何十年か先の年金受給時までの間に、再開されることはない、という保証もどこにもないのですね。
ちょっと怖いです。
が、現役時代に自分の老後のための資産を貯めておく、というのは大事なこと。
大きく増えなくても、むしろ若干減ってしまったとしても、ないよりはずっといい。
ただし、それが「個人型」である必要があるのか、というのは別の話です。
(※ 会社が「企業型」を年金制度として採用している場合には、選択の余地はありません。
ですが違った方法で老後資金を、とお考えの方は、なるべく掛け金を少なくすることをおススメします)
いずれにせよメリットもデメリットもある「確定拠出年金」の制度。
根底にあるのは「自己責任」です。
── 皆さまの「加入する?」「やめとく?」の検討に、少しはお役に立てたでしょうか。
1ミクロンでも参考になっていればうれしいのですが……
今回もまたまた長々と失礼しました。
最後までお読みいただき、本当に感謝しております。
ありがとうございました。