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オレは絶対に失業しない。

だから「雇用保険」には加入しない!



……それはムリ……
そして色々な意味で、もったいないです……



仕事
さて、雇用保険です。


冒頭のセリフのように「雇用保険」=「失業した時のための保険制度」のように思われている方も多いかと思います。


それはそれでアタリなのですが、それプラスいくつかの優秀な役割を持っているのが「雇用保険」・真の姿。


また「加入することができる」ではなく、そのための条件を満たしたら「加入しなければならない」もの。

ご自分で加入する・しないを選択できるものでもありません。


平成28(2016)年の法改正により、加入条件も見直され、パートやアルバイトなどの皆さま等、さらに多くの方が加入対象となりました。


    「アルバイトなのに、辞めたら失業保険が貰えるのはラッキーだ!」

はい。ラッキーです。
加入にはメリットがいっぱい。


── なのですが、そのほかの制度もチョコチョコと変化しているため、下手をすると「全然ラッキーじゃない」ことになってしまう可能性も出てきているのです。


    雇用保険って、失業手当がもらえる以外に何かいいことあるの?

    加入のための条件は?

    加入したくない場合はどうすればいい?

    雇用保険に入ったら夫の扶養から外されちゃうの?

    加入前より手取りが減っちゃうって本当?

    失業しない自信があるんだが……

等々含めまして、雇用保険の「メリット・デメリット」を紹介いたします。
皆さまの「雇用保険」に対するモヤモヤが少しでも薄まりましたら幸いです。



「雇用保険」ってどんな制度?

「雇用保険」とは働いている方たちの安定した生活と雇用を守るための制度のこと。


結構色々なことをしてくれます。


最もよく知られているのが、先ほどから出てきている「失業時に給付金が支給される」ですね。


これが「基本手当」。
いわゆる失業保険です。


    (*´з`)  これはありがたいのだ。しばらくそのお金でのんびりするのだ!
ダメです!
のんびりする用のお金ではなく、再就職活動中の生活を安定させるための給付金。


仕事を辞めれば給料がもらえません。

でも、再就職に向け活動をしなければならない。


そこで、一定期間失業保険(基本手当)を支給し、


  • 失業時の生活を支援
  • お金の心配をせずに就職活動に専念
つまり「仕事を探していること」が前提。


ですので、


  • 積極的な就職への意思があること
  • 健康面や働くための環境など、いつでも仕事に就くことができる状態であること

    → にもかかわらず働き口が見つかっていないこと

が条件となります。

「なし」とみなされた場合には失業保険は支給されません。


    (-_-;)  ……やる気アピールをするのか……自分を表現するのは苦手なのだ……
そういうことはしなくていいです。

まずはハローワークに求職の申し込みに行ってください。

希望する就職先の条件やこれまでの経験など必要事項を記入し、辞めた会社からもらっている「雇用保険被保険者離職票」とともに窓口に提出。

離職の理由などを聞かれ、書類が受理されれば失業保険の受給資格は一旦手に入ります。


ですが、これですべてが済んだわけではなく、4週間ごとに繰り返される、


    「失業が認定されるか否かが決定する日(失業認定日)」
の間に就職活動をしていた実績が認められないと給付を受けることはできないのです。


そして、この「求職活動実績」を作るのが若干面倒。


ハローワークのパソコンで求人検索をしているだけではダメ。

その後に相談窓口で相談サービスを受けたり、実際に履歴書を送付、または面接を受けるなどの必要が出てきます。

自宅のパソコンで求人サイトを覗く、就職情報誌を見ている、などだけでは「意思なし」となってしまうのですね。


こうした実績作りを4週間に一度の「失業認定日」に合わせ数回ずつ行わなければならないのは、ちょっと……かなり面倒です。でもしょうがない。


各ハローワークごとにその基準が微妙に違うこともありますので、そちらについても一度ご確認ください。


さてさて、先ほども書きました通り雇用保険とは「働いている方たちの安定した生活と雇用を守るための制度」です。

失業した際に助けてくれるだけでなく、そのほかにもいくつかの給付制度が備えられています。


上記の失業時の給付金が「求職者給付」。


それ以外にも、


      ① 就職促進給付
      ② 教育訓練給付
      ③ 雇用継続給付
      ④ 育児休業給付
      ⑤ 介護休業給付

を受けることができます。

非常に頼りになる制度なので、ごく簡単にそれぞれ見ていってみましょう。




「雇用保険」の様々なメリット

いずれの場合も「受給資格」のあることが条件。

まずは前述の「求職者給付」。

「雇用保険」に加入していることは絶対の前提なのですが、自己都合で離職した場合には、


    「会社を辞めた日までの2年間で通算12か月以上雇用保険の被保険者(※ 雇用保険に加入し保険料を支払っていた)であったこと」
倒産や会社の都合による解雇、またはケガや病気等、やむを得ない理由での離職の場合では、


    「1年間で通算6か月以上の被保険者期間」
が必要となります。


基本手当がどのくらいの期間支払われるかは、会社都合退社の場合、

  • 年齢
  • 被保険者期間
によって変わってきます。

最も長い期間受け取れるのは「45歳以上60歳未満」の方が20年以上の厚生年金保険料を支払い続けてきた場合。

330日間です。


自己都合退社では「年齢」は問われず被保険者期間のみでその期間が決まり、同じく最長となるのは20年以上の被保険者期間を持っている方。

ただし期間は半分以下の150日に短縮されています。


 ■ 就職促進給付

就職活動の甲斐あって、見事再就職を果たし場合に数種類の「就職促進手当」が給付される制度です。


    「再就職手当」
再就職が決まれば、基本手当の給付はストップ。


    (;´Д`)  貰えるものは最後までキッチリいただきたいのだ。もったいないから、貰えるものを貰い終わってから再就職するのだ
── ということのないよう、1年以上の雇用期間が見込まれる安定した再就職先が決まった際に支給されるのが「再就職手当」です。


上記の通り、基本手当を受給できる期間は離職理由や被保険者期間によっても様々。


再就職手当の受給には、決められた給付期間が3分の1以上残っている場合、というのが追加の条件となります。


例えば給付日数が150日なら受給資格取得後100日以内に再就職先が決まった場合ですね。

50日以上日数が残っていなければ給付はされません。


給付はストップとなりますが、その代わりに、残っている日数分(上記の例であれば50日以上)の60%から70%が支給されることになるのです。


金額的に減ることは減るのですが、就職先も決まったことですし、貰えるだけラッキー。

50日(3分の1)を切ってから就職先が決まった場合を考えますと、もう少しラッキー度も上がります。


ただし、ここにも条件が一つ。


    「新しい職場でも雇用保険に加入すること」
です。


従業員を一人でも雇っている事業所は、企業・個人に関わらず「雇用保険の適用事業所」とされます。

業種や規模なども関係なし。


労働者側から「加入したい」という希望があれば加入可能、となっているのは個人で行っている従業員数5名以下の農林・畜産・養蚕・水産業のみです。


それ以外、つまりほとんどの事業所では条件を満たしている従業員について、その加入手続きを行う義務があるのです。

従業員が「加入したくない」と言ってもダメ。

強制加入となっています。


その「満たすべき条件」というのがこちら。


      ① 31日以上、継続して雇用する見込みがあること
      ② 一週間に20時間以上の労働時間があること
      (※ 雇用契約などで、あらかじめ取り交わされている労働時間が対象。イレギュラーな残業や休日出勤は含まれません)
      ③学生ではないこと
      (※ 卒業見込みがある・定時制に通っている等の場合を除く)

これらのすべてに当てはまることです。

正規社員の方は当然当てはまります。

そして上記の通り農林水産業等ではないほとんどの事業所が適用事業所となっているため、


    「新しい職場でも雇用保険に加入すること」
ここもクリア。
問題なしです。


ですが、問題はパート等、フルタイムではない働き方の場合。

この条件を満たさないと「雇用保険の被保険者」になることができません。


これまで働いていた勤め先で雇用保険に加入していたとしても、次の職場では勤務時間が週20時間以下。

または31日以下の雇用契約などの場合は「再就職手当」を受給することができなくなってしまうのですね。

その後シフト等の変更により、加入できるようになった際には 以前の加入期間を合算できる場合もありますので、新しい職場やハローワークで確認してみてください。


そしてさらに、


    「就職促進定着手当」
再就職手当も貰い、新しい職場での仕事にもだんだんと慣れ始めてきたころにもしかしたら給付されるかもしれないのがこちら。


受給できる条件は、


  • 「再就職手当」の支給を受け、その新しい職場に6か月以上「雇用保険の被保険者として」雇用されていること
  • 新しい職場での6か月分の賃金が(日額換算で)、前の職場での賃金日額を下回っていること

簡単に要約してしまいますと、


    「給付日数を3分の1以上残した状態で再就職をし、

    新しい職場でも雇用保険に加入しつつ半年間働いてはいるが、

    前の仕事に比べ給料が(日額換算で)減った」
こうした際に給付が行われる制度です。
(※ 上限は残っていた給付日数の40%)


また、

    「就業手当」
こちらは、


  • 「1年以上の雇用期間が見込まれる安定した再就職先」ではない、臨時的な就労の場合
  • 決められた給付日数が3分の1以上、かつ45日以上残った段階での再就職であること
  • 再就職手当に該当しないこと

これらを満たすと支給される制度。


「再就職手当」と似ているように思えるかもしれませんが、かなり違うのです。

そして非常にややこしい。


「臨時的な就労」の基準は、


  • 7日間以上の契約期間
  • 週20時間以上の労働
  • 1週間に4日以上働くこと
といったもの。

再就職というより、短期契約のバイトといった感じですね。


この間に支払われるのは、

    「基本手当」× 30%
これが、就業手当単価となります。

実際には働いた分の給料もプラスになるわけですので、例えば「基本手当5000円」「仕事の日当10,000円」だった場合、


    「10,000円」+「5000円 × 30% = 1500円」=11,500円
ですが、仕事がお休みの日はバイト代は入りませんので就労手当「1,500円」だけとなってしまうのです。


    (*´▽`*)  仕事がお休みでも失業保険でお小遣い的なお金が貰えたのだ。いいではないか!
本来なら仕事のない日の収入はゼロ。

でも、就業手当があれば1,500円は貰える。


良いといえば良いのですが、申請せず手当をもらわなかった場合には、

    「その日の分の基本手当は支給されないが、基本手当(上記の例なら5,000円)の受給日数も減らない(受給日が先送りされる)」
ついでに言えば上限もあり。

さらに言ってしまえば、この期間中も失業保険を貰える受給日数のうち。

30%ですが、給付を受けていることになりますので、受給日数を食いつぶしていくことになるのです。


    Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン  お小遣い的なヤツ、いらないのだ……貰うのは遅くなっていいから、たくさん長い期間いただき続けたいのだ……
ハローワークでは原則対象者は全員申請、としていますが就業手当の申請は自由。


ただし月に14日以上働いた場合には、たいてい「働いている」とみなされ、基本手当の受給資格がストップされてしまいます。

また、失業保険が受け取れるのは離職した日から1年間です。

「先送り」を繰り返している間に1年間が過ぎてしまった場合には就業手当どころか基本手当も受け取れなくなってしまうことに。

ここは少し注意が必要です。


「再就職手当」とわざとかと思うくらい似ているので(名称と条件等は)くれぐれもお間違いのないようお気を付けください。


続いて、

    「常用就職支度手当」

こちらは社会的な事情や障害などにより、就職が困難な方の就職を促進するための制度です。

基本手当の受給資格があることが条件となりますが、一定の要件を満たすと上記支度金が支給されます。


就職促進給付の最後は、

    「移転費」
こちらも簡単。
全然ややこしくありません。


ハローワーク等の紹介により再就職した勤め先が、引っ越しをしなければならないレベルで遠かった場合に支給される交通費や移転のための費用です。

また、就職活動のために出向く先が遠く、日帰りで帰れない、もしくは交通費がかかるといった場合にも「宿泊費」「交通費」の支給を受けることができます。
(※ 規定に沿った額)


平成29年には「雇用保険法等の一部」が改正されました。

それ以前には移転費の支給対象は「ハローワークからの紹介」による就職先に限られていましたが、現在は「ハローワークとの連携に適している職業紹介業者も含む」とされています。


太っ腹。
面倒見もいいのです。



──「就業手当」は若干微妙な部分もありますが、就職促進給付は、何らかの事情により離職した方の生活を支援し、一日でも早い再就職を応援してくれる制度となっています。




 ■ 教育訓練給付

雇用保険の加入者(働いている人)、または離職等により被保険者ではなくなったものの、その期間がまだ1年以内の方が対象。


こちらは名称通りです。

厚生労働大臣指定の教育訓練を受講した場合、

    「その費用の50%(平成28年までは40%)」+「資格取得により20%」= 70%
に当たる「教育訓練支援給付金」が支給されます。

(※ 専門性の高い「専門実践教育訓練」の場合。
「一般教育訓練」の場合には「20% + 20% = 40%」。
ちょっと少ないです)


さらに、45歳未満の方のに対しては、

    「受講期間中の基本手当の80%相当額を上記支援給付金として支給」
    (※ h28年までは50%でした)
がプラス。

平成34年までの延長が決定しています。


教育訓練給付金制度を利用できる専門学校等はたくさんあります。
(※ これが「厚生大臣指定の教育訓練の受講」に当たります)


国からその費用の一部を負担してもらいつつ、資格も取れる。

一般教育訓練給付金は若干給付額は低くなりますが、厚生年金に加入していなければ、全額自己負担です。


そう考えると、かなりいい。

ただしどちらにも上限・下限があり、「専門実践教育訓練」では「年間4千円~40万円」。

「一般教育訓練」では「年間4千円~10万円」となっています。


……そうだとしても、良い制度です。


 ■ 雇用継続給付

妊婦さん
こちらもいくつかあり、
  • 再就職などで賃金が減った場合
  • 育児や介護などで仕事を一時的に休まなければならなくなった場合
それぞれに給付金が支給されます。

    「高年齢雇用継続給付」
対象となるのは60歳以上65歳未満の方。

雇用保険に加入していた期間が5年以上あることが条件となります。


60歳以降の賃金が60歳の時に受け取っていた金額の75%未満になった場合に支給される給付金です。


60歳になってもそのまま同企業等で働き続ける場合には、

    「高年齢雇用基本継続給付金」
60歳以降に再就職し、新しい職場で働く場合には、
(※ 基本手当を一部受け取ってからの再就職、という違いがあります)

    「高年齢再就職給付金」
60歳以降になると、賃金は30~70%に減ってしまう、というのが一般的なのです。

ですが、厚生年金が支給されるのは65歳から。

ということで、こちらの制度です。


    「育児休業給付」
保育所不足も深刻です。

原則1歳までのお子さまを養育するための休業時に支給される給付金制度だったのですが、6か月延長。

それでも保育所が見つからないなどの状況であれば、プラス6か月の延長。

2歳までは育児休業が取れるよう、改正されました。

給付金の支給もその期間中続きます。


    (。-`ω-)  だが私の奥さんは言い出しにくい職場の雰囲気にのまれ、結局「妊娠退社」をしたのだ……
まさかの既婚者……しかもお子さんまで……


    ( ̄▽ ̄)  という白昼夢を今見ていたのだ!
寝ない!!


ですがこうした制度があっても実際に言い出せないことは多いのです。

そこで政府は、事業主に対し、

    「従業員が妊娠・出産した場合にはこうした制度を利用できることをちゃんと教えるように」

    「本人だけでなく、その配偶者(夫)にも伝えるように」
さらには、

    「男性の育児参加を促進したい! 小学校に入る前の小さな子どもがいる従業員(特に男性)が育児のために使える休暇を積極的に作るべし!」
と休暇制度の設置に努めることを義務付けています。

「作ること」を義務付けているのではなく「作るように努めること」への義務付けですが、すごいですね(語彙力のない感想ですみません)。

    「介護休業給付」
これも基本的には「育児休業給付」と同じです。

介護のために休む場合にも、

    最長93日(3か月)、給与額の67%(3分の2)
の給付金が支給されます。
(※ こちらは平成28年に「給与の40% → 67%」にアップ)


また育児休業の時と同様に、介護が必要なご家族がいることを知った場合、事業主には介護休業についての制度を利用できることを伝えるよう規定されています。




■ 給付のために必要な期間は?

いずれの制度も利用する・しないでは大違いです。

まずは「雇用保険」に加入していること。

そして、


    求職者給付

  • 自己都合退職の場合: 会社を辞めた日までの2年間で通算12か月以上雇用保険の被保険者(※ 雇用保険に加入し保険料を支払っていた)であったこと
  • 会社都合退社の場合: 1年間で通算6か月以上の被保険者期間

  • 教育訓練給付

  • 加入期間が3年以上(現在も加入中)
  • 被保険者資格を喪失した日から1年以内(離職した方)

  • 高年齢雇用継続給付

  • 被保険者期間が5年以上ある60歳以上の方

  • 育児休業給付

  • 開始日以前の2年間に被保険者期間が12か月以上あること

  • 介護休業給付

  • 開始日以前の2年間に被保険者期間が12か月以上あること

といった要件を満たせば給付を受けることができるようになります。


求職者給付の基本手当の給付期間につきましては、「年齢」「被保険者期間」「離職理由」などにより細かく分かれています。


また、ほとんどの事業所が雇用保険の適用事業者となってはいるのですが、年齢や働き方によっても加入条件は若干異なってきます。


こちらについても簡単に見ていきましょう。




加入・受給のための条件はこちら

      ① 一般被保険者
      ② 高年齢継続被保険者
      ③ 日雇い労働被保険者
      ④ 短期雇用特例被保険者

    「一般被保険者」
フルタイムで働く正規社員の方はもちろん、パートやアルバイト、派遣社員の方も一定の条件を満たせば「一般被保険者」となります。

その条件が先ほどの、

      ① 31日以上、継続して雇用する見込みがあること
      ② 一週間に20時間以上の労働時間があること

      (※ 雇用契約などで、あらかじめ取り交わされている労働時間が対象。イレギュラーな残業や休日出勤は含まれません)
      ③学生ではないこと
      (※ 卒業見込みがある・定時制に通っている等の場合を除く)
ですね。

これらすべてを満たし、なおかつ給付金を受け取るための被保険者期間があれば一般社員と同じように制度を利用することができます。


パートタイムで働いていても、例えば「開始日以前の2年間に被保険者期間が12か月以上あること」をクリアしていたら育児休業給付金の受給も可能。

もちろん離職時にも失業保険(基本手当)は支給されます。


上記「①~③」の条件を満たした場合、イヤでも強制的に加入なのですが、ここまでの話では「イヤ」な理由はあまり見当たらないのです。


    「高年齢継続被保険者」
一般被保険者だった方は65歳に達すると「高齢継続被保険者」となります。


失業時に支給されるのが「高年齢求職者給付」。


平成29年の改正前までは「雇用保険」に加入できるのは65歳までの人でした。

それ以前も高年齢継続被保険者の適用はあったのですが、


    「65歳になる前から同じ雇用主のもとで働いていた人が65歳に達した場合」
のみ該当、とされていました。

改正後は「再就職」で雇用した方も対象。

どのケースでも65歳以上の方も高年齢継続被保険者として、受給には離職前の1年間の被保険者期間が、

  • 半年以上1年未満: 30日分
  • 1年以上: 50日分
であることが条件。

一時金として給付金を受け取ることができます。


    「日雇労働被保険者」
こちらに該当するのは、

  • 雇用契約期間が30日以内の方
  • 雇用期間を設けずに、1日単位で仕事をする方
  • 雇用保険の適用事業所に雇用されている方
失業した際に支給されるのが「日雇労働求職者給付金」です。

受給には「日雇労働被保険者手帳」に貼付された「雇用保険印紙」が、

  • 離職前2か月間で通算26日分あること
が条件となります。

    「短期雇用特例被保険者」
2つのパターンがあります。


1つ目は、
  • 雇用期間が1か月以上4か月以上であること
  • 1週間に30時間以上の労働時間があること
    (※ 雇用契約などであらかじめ決められている時間)
「季節的労働者」と呼ばれます。

季節によって必要とされる、例えば、


    「雪が降る季節ではないと仕事にならないスキー場での仕事」

    「海開きが行われる夏のみ仕事になる海水浴場での仕事」

    「本来の仕事(農業など)がない時期に他の仕事に就く」
などですね。


もう一つは、

  • 今までもこれからも1年未満の雇用契約を繰り返す予定であること
「短期雇用の常態」のケース。


どちらもかなり不安定なのです。

ですので、失業した際には、

  • 離職前の1年間で通算6か月以上の被保険者期間
の条件クリアで「特例一時金」として基本手当30日分の給付を受けることができるようになっています。


    ( ̄▽ ̄)  なんだか色々もらえてリッチになった気分なのだ
気のせいです。


また、これらもすべて「失業保険」。

単に離職したから貰えるもの、ではなく、次の仕事を探している状況を支援するための給付金・一時金です。

「リッチになった気分だ~」などと言っていると受給自体がストップされることもありますのでご注意ください。


    (;´Д`)  はい……



デメリットは?

細かいことを言い出したらそれなりにあるのかもしれませんが、全体的にデメリットは「ほぼない」です。


給料から保険料は天引きされますが、保険料率は平成31年度まで0.6%。

しかも事業主と労働者との折半となりますので、実際に支払うのは「0.3%」。


消費税が10%になろうかという時代に0.3%です(あまり関係ないですが。でも低い)。

0.3%というのはしつこいですが1000分の3。


例えばパートなどで月に8万円稼いだとしたら240円持っていかれるだけ。

それで、失業時だけでなく育児や介護、ついでに資格取得の面倒まで見てくれるというのはすごい。


上記のこと以外にも29年の改正では色々な面が見直され、さらに手厚い制度となりました。


── 制度の見直しにより改良せざるを得ないほど、就職事情等が悪くなっている、ということでもあるのですが……


ただし、一つだけ注意しなければならないポイントはあります。


正規社員の方ではなく、パートやアルバイトなど、条件付きで「一般被保険者」になる方たちの場合です。


問題は「雇用保険法等」だけではなく、「社会保険加入条件」「配偶者控除について」なども見直されていること。

ちょっとだけ厄介です。


こちらについても見ていってみましょう。




気をつけるべきポイント

まずは「配偶者控除枠の拡大」について。


    「夫の所得税を減らすにはパートの年収を103万円までに収める」
103万円を超えてしまうと配偶者控除が受けられないことになっていました。


これが2017年までのいわゆる「103万の壁」。


2018年からは配偶者控除枠が拡大。

「150万円」までは「配偶者特別控除」とされ、これまでの「配偶者控除」と同じ額の控除を受けることができるようになったのです。

(※ 便宜上「夫」が普通に働き「妻」がパートという設定)


    (。´・ω・)?  良かったではないか。何が問題なのだ?
夫の給与収入によっては控除額が減額、一定以上の場合には1円も控除してくれなくなったのです。

  • 満額控除: 夫の年収が1120万円まで
  • 一切の控除なし: 夫の年収が1220万円を超えた場合
妻が200万円稼ごうと、90万円稼ごうと、関係なく1120万円(夫の給与年収)を超えた時点で徐々に控除額が減っていき、1220万円に到達した時点でゼロです。

というよりも、今まで受けていた控除分がプラス。


    (=゚ω゚)ノ  おーい。「150万の壁」はどこ行ったのだ~
ちゃんとあるのですが、もう全然関係なくなってしまう方も出てくるのです。


では、1120万円以下の年収(夫)であれば150万円の控除枠内ギリギリまで稼いでいいのかというと(良いのですが)、これもまた損をしてしまうケースが出てくるのですね。


今度は夫の社会保険の扶養から外れてしまう「130万の壁」です。


扶養から外れるわけですので、社会保険、つまり「健康保険」や「年金」などの保険料を妻本人が負担することになります。

結構な金額。2つ併せて年間20万円ほどが引かれてしまいます。


    131万円稼いだ方の手取りは「マイナス20」で111万円。
    120万円なら「マイナス0」で120万円。
おかしなことになってしまうため、上記の「103万円(今では関係なくなりましたが)」と合わせ、130万円も一つの目安となっていたのです。


そしてもう一つ。

「社会保険加入義務」です。


平成28年には従来対象外だった短時間労働者(パートやアルバイト)などにも、条件を満たせば社会保険への加入義務が生じるようになりました。


      ① 勤務時間・勤務日数が正社員の4分の3以上であること

まずはこれ。

正社員・一般社員、またはほぼ社員さんと変わらない条件で勤務している場合には加入義務が生じます。


ですがこの要件を満たさなくても、


      ② 以下の要件を満たしていること
  • 勤務期間が1年以上、またはその見込みがある場合
  • 雇用契約などであらかじめ決められている労働時間が週20時間以上であること
  • 年収106万円以上(月額賃金が8,8万円以上)
  • 学生でないこと
  • 従業員数501名以上の事業所(雇用側・労働者側、互いの合意があれば501名以下でも加入は可能)

これらすべてに該当していれば強制加入です。


しかも2019年10月からは「500名以下」であっても加入対象。


    (。-`ω-)  無念……「501名の壁」案外あっさり破られる、なのだ……
ゴチャゴチャしてきてしまいましたが、


    ◎厚生年金の加入条件(パートなどの場合): 週20時間以上の労働時間と31日以上の雇用期間(の見込み)

    → その年収が106万円を超えると、場合によっては「社会保険」の加入対象になることもある


    ◎配偶者特別控除枠: 103万円から150万円に拡大

    → でも130万円を超えると「夫の社会保険の扶養枠」から外れる
    →「社会保険料」を本人負担で支払うことに


    ◎厚生年金に加入したくない場合(天引きがあるため): 労働時間と雇用期間に気をつける

    → 加入対象にならなくても「年収」によっては社会保険料を負担することに
    → 雇用保険のメリットが受け取れず、社会保険料の負担のみ増える
    → ただし社会保険に加入したことによるメリットは受け取れる


    ◎どうしても年収が130万円を超える場合には: 諸々の保険料を差し引かれても世帯収入が上がるまで年収(妻)を増やす

    → その目安は「170万円以上」と言われています

このような感じですね。


今回は「雇用保険」にスポットを当てた内容のため「社会保険」のメリットやデメリットについては割愛させていただきますが、加入は決して損ばかりではありません。

手取りが減る、というのは痛いですが、加入すべきメリットもたくさんあるのです。




雇用保険の「メリット・デメリット」のまとめ

お疲れ様です。

最後にもう一度サクーっとおさらいです。

雇用保険のメリット・デメリットをまとめていってしまいましょう。


    メリット(条件を満たしていることが前提)

  • 失業した時に基本手当(失業保険)の給付を受けることができる
  • 再就職が決まった際にも条件によりいくつかの給付が受けられる
  • 取りたい資格なども制度を利用すれば、国から一定額の費用を援助してもらえる
  • 育児や介護による休業の際にも給付金が受け取れる
  • 高齢になり(60~65歳)賃金が以前よりも減った場合にも給付金でフォローしてもらえる
  • 就職活動などで遠方に出向く、もしくは紹介された職場に再就職するための転居の際にも交通費・宿泊費・移転のための費用などが支給される

  • 正規社員に限らず、パートやアルバイト、日雇で働く、1年未満の雇用契約で働く方等が失業した場合にも「給付金」や「一時金」が支払われ、その後の再就職の支援をしてくれる
  • 改正前までは雇用保険加入の適用外だった65歳以上の働く方も適用範囲内に


  • デメリット

  • 再就職の意思・能力がないとみなされれば受給はナシ
  • そのための「求職活動実績」を作ることが若干面倒くさい
  • 給料から雇用保険料が天引きされるため手取りは減る

  • 「配偶者控除枠」「扶養枠」などとの兼ね合いによっては手取りがさらに減る可能性もある



終わりに……

    「絶対に失業しない自信があるのだが……」
その自信がどこから来るのかは不明ですが、失業しなくても何かと役立ってくれるのが雇用保険。


正規社員の皆さまは問答無用で強制加入ですので「イヤだ」といってもどうにもならないのですが、パートやアルバイトの方などは「条件をクリアしない」ということで加入対象にならずに済むことはできます。


配偶者控除枠・扶養枠とは関係なく雇用保険の加入条件に当てはまった場合には強制加入。


が、雇用保険に加入しているからといって、すべての方が「配偶者控除枠」「扶養枠」から外れてしまうわけではありません。

これらは全く別物の基準が設けられているもの。


    ( 一一)  ……うちの奥さんなんか、ややこしすぎて熱を出したのだ……
大丈夫ですよ。
熱を出した奥さんは幻です。


……ですが、本当にややこしいのです。



── さてさて、今回も長々と書いてしまいました。


勤め先、またはハローワークによっても細かい部分に違いが出てくることもしばしばですので、実際に「いざ受給資格取得!」となった際には、諸々しっかりとご確認ください。


転ばぬ先の雇用保険。


少しでも皆さまの「雇用保険スッキリ度」が上がっていればうれしいです。

最後までおつき合いいただき、本当にありがとうございました。


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