英語でも日本語でもメリットは「メリット」、デメリットは「デメリット」じゃないの?
「料理を作る最大のメリットは、食べた人を笑顔にできること!」
「最大のデメリットは、たまにだけど食べた人をガッカリさせちゃうこと……」
「犬と一緒に生活することのメリットは ── かわいい相棒と毎日一緒に遊べることだと思う」
「でも、忙しい時にも意地でも遊ばなきゃなんないのが最高に最悪なデメリット……」
「この参考書のメリットは『これさえやっておけば、合格間違いなし』ってくらい濃い内容であることだ」
「でも、だからこそ、それはデメリットにもなる。なぜなら、そこまで濃い内容をすべて理解するなんて至難の業すぎるからだ!」
世の中大抵のものには「いい部分」もあれば「悪い部分」もあるもの。
それを私たちは「メリット」「デメリット」と、ちょっとカッコよく呼んでいたりするのですが……
── 実はこれ、本場の英語圏ではほとんど使われていない表現なのです。
!!!
どこでどう捻じれて伝わってしまったのかは不明ですが、完全に「日本式の表現」という衝撃の言葉、「メリット」「デメリット」(おおげさです)。
今まで通り、友達との会話などでは大いに使って構わないものなのですが、ネイティブの方たちと話す際にはちょっと気をつけないと、
「ホワット? ユーはいったい何を言ってるんだい?」
なことにもなり兼ねません。
── でも「merit」「demerit」って、英語でもあるよね?
あります。
が、やはりカタカナ表記での「メリット・デメリット」と同じような意味合いで使うと「ホワット? ユーは~」となる。
デジャブです。
……それはイヤだ……
はい……
もうこの際、知ってしまいましょう。
「メリット・デメリット」は英語ではどのように表現されているのか?
「merit」「demerit」の持つ意味とは?
などなど、日本で使われている「メリット・デメリット」の本場での姿について、紹介いたします。
正しい表現・表記をサラッと使えば、
「なんかアイツ、いつの間にか1UPしたな……」
周りの皆さんにそう思われること間違いなし(たぶん)。
少しでもそのお手伝いとなれましたら幸いです。
「メリット / デメリット」と「merit / demerit」の関係は?
結構な頻度で会話などにも出てくる「メリット」「デメリット」。先ほど書きました通り、英語表記でも、これと同じ音を持つ「merit」「demerit」という単語はあるのですね。
だから、ややこしいのです。
ややこしいので ── 順を追って見ていきましょう。
まずはカタカナでの「メリット・デメリット」。
私たちが良く使うバージョンですね。
-
★「メリット」
- 長所、価値、利点、功績
- 短所、欠点、不利益、不利な点
★「デメリット」
冒頭の「参考書」の例でいえば、
「この参考書の『優れているところ』は内容の濃いところ」
「『ダメなところは』濃すぎて理解するのが大変なこと」
といった感じに置き換えることができます。
では今度は英語表記での「merit」「demerit」です。
-
☆「merit」
- 報酬や当然の報い
- 長所、利点、美点
- 手柄、功績
- 価値、真価
- (軍隊や学校、交通規則などで記録される)罰点
- 欠点、短所
☆「demerit」
…………あれ?
何となく先ほどと話が変わってきました。
「merit」「demerit」でも何の問題もないような気もします。
── でも、ほとんど日本式の「メリット・デメリット」のような意味合いで使われることはない……
……何で?
「merit / demerit」は、
規則やルールに対しての「有利さ」や「これをやってしまうとペナルティとなる」
といった場面で使われるもの。
「長所 / 短所」といった意味合いでなら、どのような場合でも使える単語ではないからです。
「犬を飼うmerit」だと、
犬を飼うことによって何か手柄が立てられる、何かに対して有利になる
のような感じ。
私たちが、
「犬を飼うメリット」=「だって毎日遊べて楽しいから!」
などという場合とはニュアンス的に違うものとなってしまうのです。
また「メリット制」という制度があるのですが、「merit」はどちらかというとこちらの意味に近い。
- 「メリット制」: 価値、賃金、保険料などに、原則以外に差をつけること
私たちが普段使っている「メリット」とは、「メリット制」も「merit」も、少し意味合いが違うのです。
使ったら絶対にダメ、というわけではないのですが、これよりももっと適した言い回しがあるので「merit」「demerit」にはほとんど出番がない。
ちょっと違いますが、
「My name is Taro」
のような感じ。
これも一昔前の英語の教科書では基本の「き」のような立ち位置にあった例文でした。
が、今やほとんど死語扱いです(「死語」という言葉も「死語」ですが)。
=「私の名前はタロウです」
間違っているわけではないのですが、実際にこのような自己紹介をする人はほぼいません。
「I’m Taro」
で十分。かつエレガント。
では「十分かつエレガント」な「『I’m Taro』的メリット・デメリット」は?
続いていくつかある「正解」を見ていきましょう。
(※ 以下「メリット・デメリット」とカタカナで表記したものについては、日本で通常使われている、冒頭の例にあるような意味合いを持つもの、として書かせていただきます)
ズバリ!「メリット・デメリット」は英語ではこうなる!
「メリット・デメリット」のように使われる言葉の中でも、最も意味合いの近い表現が、「advantage(「メリット」に近い方)」
「disadvantage(「デメリット」に近い方)」
です。
- 「advantage」
→ 強み、利点、有利なこと、便利、優越、好都合、裕福な など - 「disadvantage」
→ 不利な立場、不便なこと、損害を与える、不利な、恵まれない、不都合な など
「メリット・デメリット」を直訳(というのもヘンですが)した感じですね。
「advantages and disadvantages」
として「有利 / 不利」「長所 / 短所」などの比較に用いられています。
公式の場などでよく使われている言葉です。
また、
「good point」
「bad point」
「up side」
「down side」
なども自然な言い回し。
……なのですが、実はこれらよりももっと普段使いされている表現があるのですね。
もちろん「advantage / disadvantage」や「good point / bad point」などでもいいのです。
ですがネイティブの皆さんは、さらに使い勝手のいい表現を多用。
上記の通り「有利 / 不利」「長所 / 短所」などを比べる時にはもちろん「賛成 / 反対」を表わす時にも使える、
「pros (メリットに近い方)」
「cons (デメリットに近い方)」
「pros and cons」で、「賛否両論」「賛否」の意味を持つ言葉です。
もの凄くかしこまった場面では「advantage s and disadvantages」が適切な表現になるかと思います。
が、実際に最も一般的な「メリット・デメリット」の英語での表現はこれ。
どのような場でも違和感なく使える「pros / cons」となります。
「pros」「cons」って何の略?
字数としても短いですし「pro-」「con-」から始まる単語も多いので、何かの単語を略したもの、もしくは頭文字を並べた言葉、と思われがちなのですが、どちらもちゃんとした一つの単語。英語にはラテン語が語源となっている単語が多いのですね。
「pros」「cons」ももとはラテン語。
(※「cons」は「contra」を縮めたもの。これをもって略語、とすることもできなくはないです)
それぞれ英語では「for」「against」の意味となります。
-
★「pro(「s」は複数形として)」
- ~に賛成して
- 賛成の、支持の ☆「for(いくつもの意味を持つ言葉ですが)」
- 支持、賛成
- ~に味方して
- ~を擁護して
-
★「contra」
- 反政府勢力
- 反政府軍兵士
- 反対、逆 ☆「against」
- (基本義)対立、衝突していること
- ~に反して
- ~に反対して、逆らって
「contra / against」の持つネガティブな破壊力が凄いです……
実際、頭に「contra~」とついている単語には、
- 「contraband」: 密輸、密売買、不法取引
- 「proactive」: 先取りする、先を読んで行動する、事前対策となる
そこはさておき、このようにある事柄の、
「良い面 (pros)」と「悪い面 (cons)」
についての話し合に使われたり、
「この意見に賛成(pros)か反対(cons)か」
といった多くの場面で使われている、最も一般的で間違いのない言い回しが、
「pros and cons」
なのです。
日本では「メリット・デメリット」はダイレクトに「賛成・反対」を表わしてはいませんが、
「長所がある」=「結局のところ、だから『賛成』する」
「短所がある」=「そういうものには『反対』である」
のように繋がっていきます。
ニュアンス的には「ピッタリ」ではなく「最も近い」なのですが、こちらの表現が「メリット・デメリット」の代わりに使われている、自然で一般的な本場での表現となります。
おさらいとまとめ♪
「料理を作る最大のpros(プロス)は、食べた人を笑顔にできること!」「最大のcons(コンス)は、たまにだけど食べた人をがっかりさせちゃうこと……」
── こう言った方がいいですよ、というわけでは全然ありません。
これまで通り「メリット・デメリット」で大丈夫。
というより、これではむしろわかりにくくなってしまいます。
ただし、このすべてを英語で話す場面、つまりはネイティブの方たちと話す時には、ぜひ「merit / demerit」ではなく「pros / cons」で表現してみてください。
こなれてる感が非常にアップします。
── でも、今まで普通に使ってた「メリット・デメリット」が「ホワット?」って思われちゃうレベルだなんて思ってもいなかった……
はい……
初めて知った時は私もかなりの衝撃を受けました……
日本では「メリット・デメリット」。
ネイティブの方たちは、それを「pros / cons」と表現する。
結論はそこなのですが、最後にもう一度おさらいです。
「メリット・デメリット」の英語での表現についてまとめていってみましょう。
同じ音を持つ「merit / demerit」の意味は?
「メリット・デメリット」と同様の意味も持ちますが、「規則やルールに関しての『有利さ』『ペナルティ』的意味合い」
が強くなります。
私たちが普段使っているようなノリで、
「この商品のmerit / demeritは~」
とすると、
「この商品を使うと、付加価値として○○もついてきます」
「この商品を使ったら△△の不利益をこうむることにもなり得ます」
のような感じに。
「長所・短所」を表わす「メリット・デメリット」とはニュアンス的に噛み合わない場面も出てきます。
英語圏ではあまり登場しない表現です。
「メリット・デメリット」の意味を持つ英語での表現は?
一つだけが正解ではないのですが、最も使われているのは、「pros and cons」
他、公式な場でよく使われているのが、
「advantages and disadvantages」
それ以外にも、
「good point / bad point」
「up said / down said」
などもあります。
「pros and cons」ってどういう意味?
えっと……「メリット・デメリット」的な意味です……- 「良い面 (pros)」と「悪い面 (cons)」
- 「この意見に賛成(pros)」か「反対(cons)」か
普段の会話(日本語で、日本の方が相手なら)で言い直す必要はありませんが、英語圏の方と話す場合や英語表記の際には、ぜひこちらをお使いください。
終わりに……
大抵のものには「メリット・デメリット」 ── どちらもある(始めの方でも書いた気がする……)今回の「pros / cons」も、同様です。
この「ネイティブな言い回し」も、一歩間違えれば(お友達同士との普通の会話などでは)「へ?(ホワット?)」となってしまいます。
要はどこで何を使うか。
そして、そのための選択肢を持っているか。
ただ、海外の方とのやり取りの多い方ですとおそらく感じることもあるかと思うのですが、
「pros / cons」
を使わない人も結構多いのです。
ですが、英語圏に長く滞在していたり、お知り合いがいたりする方たちはもれなくこの表現を使うのですね。
「これ、ホントすこ」
「ダメだ、あいつ、マジ卍」
「よしんばそれが正しいとしても……」
「なるほど、君の言うことも一理ある。確かにそれは言い得て妙だね」
……などなど、どの集合体に属しているかでも使う言葉は変わってきます。
でも「メリット・デメリット」の代わりに使える英語圏での今の主流は「pros and cons」。
── 覚えておくと、何かと役に立つ表現です。
さてさて、いかがでしたでしょう。
何気なく使っている「メリット・デメリット」。
皆さまの1UPに少しでも繋がった内容をお届けできていればうれしいのですが……
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。